出版社内容情報
がんばれよ。もっと、もっと強くなれ――
盲学校に通う小学4年生の及川正彦は、新任の先生から将棋を教わり、その面白さにすっかりのめりこみます。目の見えない人でも楽しめる将棋盤と駒を使って同級生と対戦、寄宿舎の自室では詰将棋に熱中する日々。そんな正彦の変化を、家族はあたたかく見守りますが――。
盲学校を舞台に、将棋を指す喜びを知り、それぞれに成長を遂げてゆく小学生たちとその家族、教員たちの群像劇。あたたかい読み心地の一冊です。
将棋ペンクラブ大賞文芸部門優秀賞を受賞、入試にも頻出している『駒音高く』の姉妹編。
装画/高杉千明
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シャコタンブルー
69
視覚障がい者で小学4年生の正彦が将棋と出会い、その面白さに目覚めて心身共に成長していく物語。ノンフィクションかと思えるほどに将棋の駒、戦法等が丹念に描かれて本格的だった。目が見えないハンデをカバーした将棋盤と駒が実際に大会で使用されていることを知り嬉しくなった。正彦に対する両親や姉の複雑で機敏な愛情の表現や変化が、将棋の上達と共に深まっていくように感じた。将棋に対する熱意や頑張りが昇級につながり、生きがいにもなっていく。盲学校への応援と将棋への愛情がぎっしり詰まっていた。2025/02/13
Ikutan
67
未熟児網膜症のため、生まれつき目が不自由な正彦は、寄宿舎で暮らしながら盲学校に通う好奇心旺盛な小学4年生。新任の小倉先生が特別活動の授業やクラブ活動で将棋を教えてくれることになったことで、将棋に触れ、その世界にのめり込んでいく。小倉先生のオリジナルな指導方法に応えてどんどん実力をつけていく正彦。ただただ将棋の面白さに惹かれ、一生懸命取り組む正彦の姿は、清々しく、そんな彼を見守る家族の愛情には胸を打たれました。中高校生から大人までおすすめできる良作ですね。2025/04/25
pohcho
65
島根の盲学校を舞台に、将棋を指す喜びを知った少年の成長と、彼を見守る家族や教員たちを描いた感動作。お姉さんが泣いた場面が印象的。生まれつき目の見えない正彦をあたたかく見守りながらも、心の底ではずっと心配して守ろうとしてきたお姉さん。そんな家族の思いをよそに、すくすくと健やかに成長する正彦の強さにも心打たれた。「駒音高く」の姉妹編。大辻弓彦くんが出てきたのも嬉しかった。2025/03/24
hirokun
58
★4 視覚障碍者の児童が、将棋に目覚め視聴していく様子を描いた青春成長譚。今まで知ることのなかった障碍者の兄弟、家族が抱く葛藤についても知ることが出来、非常に参考になった。読み易い文章で描かれた作品で、将棋に対する愛情さえも感じられる。2025/02/19
rosetta
35
★★★✭☆『駒音高く』が2019年だからもう6年も前か。それに出てきた大辻弓彦君がプロ6段になって登場。出雲大社の参道で老舗の蕎麦屋を営む一家の息子及川正彦は生まれながらの全盲だった。小1で島根県立盲学校の寄宿舎に入る。埼玉大学を出て新卒赴任してきた小倉先生に手ほどきされて始めた将棋にハマり、めきめき実力を伸ばしていく。爽やかでどこにも嫌味がない。逆に深みが足りないとも言えるが、人の善意だけでできている小説に文句はつけられないなぁ。しかも小倉先生の出身高校は自分と同じ春日部高校である(笑)2025/04/15