内容説明
微かな悲哀が、胸を染める。江戸の橋を舞台に、市井の人々の情を描く珠玉の連作短篇集。遠藤展子氏の書き下ろし「父と娘の『橋ものがたり』」特別エッセイ収録。
著者等紹介
藤沢周平[フジサワシュウヘイ]
昭和2(1927)年、山形県鶴岡市に生まれる。山形師範学校卒。46年「溟い海」でオール読物新人賞を受賞し、本格的に作家活動に入る。48年「暗殺の年輪」で第69回直木賞、61年『白き瓶』で吉川英治文学賞を受賞する。平成9(1997)年1月死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
122
藤沢周平ここにあり!って感じでした。橋をキーワードの短編10作品。巻末の娘さんによるエッセイも良かった。いつの世も川はただ流れて、そこには向こうとこちらを繋ぐ橋がある。渡るか、見送るか・・思いはそれぞれだ。情感たっぷりでどれも甲乙つけがたく、ドラマとなって絵が浮かぶ。新作はもう読めないのだなぁと思うと寂しいが、何度でも読み返すことの出来る藤沢周平の世界が有るのは嬉しいと思う。2017/10/27
ゆのん
61
【海坂藩城下町 第5回読書の集い「冬」】『橋』をテーマにした連作短編集。橋を渡り出逢う事もあれば別れもある。人と人を繋ぐだけではなく過去や未来も繋がっている。橋がなければ川に阻まれ出逢えなかった事を思うと不思議な縁を感じる。どの短編も素晴らしく、ホッコリしたり切なくなったり。静かに一つの物語が終わる様はまるで映画のラストを観ているよう。12020/01/01
も
49
橋にまつわる短編集。橋で出会う、別れる、再会する、ほっこりするような切なくなるような後からじんわりくる話ばかりでした。とはいえ、短編はやっぱり短い。気持ちを入れきれないまま終わってしまうのはちょっとさみしいなぁ。長編でじっくり読みたい派としては、少し物足りなかったかな。2015/08/24
紫綺
37
藤沢周平全集にて読了。川の流れが人生ならば、橋はその生き様を左右する分岐点。出逢いがあり、別れがあり、喜びがあり、悲しみがある。そんな江戸の世の切ない十の人生短編。2025/01/16
リリー・ラッシュ
25
昨年の年明けも藤沢作品でした。今年も偶然また手に取っていました。お気に入りさんからのおすすめです。おすすめ通りの良い作品でした。一日一編寝る前に読み進めましたが、一編毎に登場する男女の心を読了後しばらく思い返しては、私も感情を揺さぶられました。中には私の名前とよく似た名前の主人公が、決して同じではないのですが少し共感できる境遇だったことに溜息をもらしたり…。「小さな橋で」では小さな二人のお互いを想うラストシーン、ラストの言葉に心温めたり、笑ったり。毎晩読むのが楽しみになる短編集でした。2025/01/13