内容説明
理不尽なのは誰か!―施主、業者、住民、政治家が対立するビル建築粉争の構造を赤裸々に描く、日経小説賞作家の最新力作。―青井建設を救う形で、贈賄犯として定年前に退職した三島顕之介は、予備校の数学教師をしている。その犠牲の代償として、ひそかに譲り受けていた土地に三島は、彼の老後と息子の照樹の将来のために、ビルを建て、マンションと学習塾を経営することにした。360平方米のその土地は建蔽率70%、容積率400%。地上7階でも十分認可される当初の計画を、住宅地にあることを考慮して地上5階建てに設計変更し、さて工事にとりかかろうとしたとき、住民側から「待った」がかかった。それぞれの思惑がからまりあい、エゴイスティックな欲望が渦を巻いて“三島ビル建築”に襲いかかった…!