出版社内容情報
ジャーナリスト・堀潤が追った、香港・朝鮮半島・シリア・パレスチナ・福島・沖縄。ファクトなき固定観念が生む分断とは何か。
内容説明
香港。ガザ。シリア。福島。沖縄。朝鮮半島。ジャーナリストが5年の歳月をかけて追った、2020年、今こそ見なくてはいけない「分断」された世界。
目次
第1章 うっかり加担してしまう分断(僕らはとんかちやネジと同じです。;あちらとこちらを隔てる装置;大きな主語から小さな主語へ)
第2章 香港で起きている分断(香港人と経済;最前線にテレビカメラがいない;香港区議会選挙;香港警察の警察官;中国の若者は何を思うのか)
第3章 小さな主語から分断を見る福島と沖縄(福島と沖縄;難民≠犯罪者;わたしが守るもの;基地と原発;唯一の選択肢?;密約)
第4章 メディアと分断(天井のない監獄;分断の手当て;一帯一路;捨てられた傘;ジャーナリストの謝罪)
第5章 分断の手当て―日本と朝鮮(疑心暗鬼;近くて遠い国;議論;再会の価値;終章)
著者等紹介
堀潤[ホリジュン]
1977年生まれ。ジャーナリスト、キャスター。個人がニュースを発信するメディア「8bitNews」代表。2001年にNHK入局、2013年退局。自身の運営する「8bitNews」を中心に、テレビやラジオ、SNSなどで情報発信を続ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たまきら
22
非常に心に響くタイトルだが、著者の迷いのようなものも感じて不思議な気持ちになった。ジャーナリストにはすでにもうテンプレートが決まっていて、取材者に誘導質問しようとする人がいる。職業病であろうか。けれども、常に自分はメディアには弱者の立場に立っていてほしいと思う。政権側とご飯食べてる場合じゃないはずだ。2020/07/04
踊る猫
20
誠実な著者だな、と思う。個々の事象に関する取材のぬるさが目立たなくもないが、しかし見えを張ってハッタリで己を塗り固める書き手よりは信用できる。「何でも見てやろう」の精神で日本を飛び回り世界各地を渡り歩き、そこで拾った「ファクト」を拾い自分自身をアップデートさせていく。だが、この書き手はクセがなさ過ぎるとも思う。「個性派」ジャーナリストとしての顔が見えないのだ。誰の言葉もハイハイと聞き、それを基に右往左往する「イズム」のない人の顔が浮かぶ。メディアでは重宝されるだろうが、彼がイデオローグになれる日は来るのか2020/08/25
羊山羊
15
ある時、派遣労働者にインタビューを行った際、その顔も名前も忘れてしまう著者。まずその描写に著者ともども脳天を撃ち抜かれる。経済的に搾取される者が、個性までも収奪されることを的確に描いたシーンだ。そして著者は、香港、福島、沖縄、シリア…と世界の分断をつぶさに眺めてゆく。著者が直面する大きな主語にすり潰される小さな主語(個人たち)に、胸が締め付けられる1冊だ。そんな本著を読んでいると、どうしても個々人の悲劇に目が行くがそこで宇野氏との対談がしっかり冷や水を浴びせてくれる。2021/02/03
サメ鯨
10
現在の社会は分断されているのは薄々感じる。この本では、知っているつもりの問題でも、いざ現場でインタビューをしてみると、当事者は我々が想像もしてないような体験をしていると気づかせてくれた。また、意見を語るときに、主語をおおきくしないこと、政治の問題を考えるときは自分の生活との関連させる、興味のない出来事にもできるだけ知る努力をしようと思う。2020/05/27
みさと
7
私たちは簡単に他者にラベルを貼り、決めつけ、そして切って捨てる。それが世の中に分断を生み出していく。分断を煽って得をする人たちが世の中をそう仕向けているのか、それとも?克服するためにはまずは知ること。そして、当事者である一人一人とともにあるため、日本、中国、男、女、人種、地域など大きな主語ではなく、○○県○○町の誰々など小さな主語を使うようにする。足を運んだ分断の現場は、福島、沖縄、香港、朝鮮民主主義人民共和国、パレスチナ・ガザ地区、カンボジア、スーダン。問い続ける。簡単に分かったことにしないために。2020/09/16