出版社内容情報
日本近現代史研究で定評のある著者が、完結した『昭和天皇拝謁記』を中心に論じた歴史認識論。かなり率直な天皇の言葉も記された『拝謁記』に分け入り、天皇の戦争認識、対日講和条約発効時の「お言葉」問題、天皇の憲法に対する考え、アジア観や米国観などを鋭く分析。象徴天皇制の問題点や司馬遼太郎についても論究。
内容説明
『拝謁記』で新しく明るみになる事実から何が見えるか?!天皇の戦争認識、対日講和条約発効時の「お言葉」問題、天皇のアジアやアメリカ合衆国観などを鋭く分析する。ほかに、象徴天皇制の問題点や司馬遼太郎についても論究。
目次
日本の戦争をどう捉え、伝えるか―アジア太平洋戦争の開戦原因と戦争責任
第1部 『拝謁記』から見る昭和天皇の戦争認識(昭和天皇の戦争認識)
第2部 支配システムとしての近現代天皇制(近代天皇制による戦争と抑圧;象徴天皇制における「心の支配」)
第3部 歴史から何を汲み取るか(戦争の記憶をどのように継承するか―“表の記憶”と“裏の記憶”;歴史から何を汲み取るか―司馬遼太郎の場合)
著者等紹介
山田朗[ヤマダアキラ]
1956年、大阪府生まれ。明治大学文学部教授、歴史教育者協議会委員長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みさと
4
昭和天皇に側近として仕えた初代宮内庁長官田島道治の『拝謁記』には、天皇の発言や田島がそれにどう答えたかが記録されている。いわば昭和天皇の生の声に近い記録だ。戦争は陸軍に引きずられて起きたものでありどうしようもなかった、天皇自身ですら被害者であるというご認識。また、早期改憲して再軍備する必要があり、統率すべきは元首である天皇だとお考えになっていたこと。ご自身が退位なされなかったのは「東宮ちゃん」(明仁親王)がまだ成人していなく自分がいないとだめだとの親心からだったこと。など、知りたくなかったことが次々と。2023/09/12
くらーく
2
「NHKスペシャル 昭和天皇は何を語ったのか」で、橋爪功が演じた田島道治の拝謁記ですね。まだ、記憶に残っているなあ。本書は、拝謁記を中心に著者の天皇の戦争認識を述べると言う本で、あくまで著者が思うものですからね。でも、資料を基に述べているので、概ね合っているのでしょうな。 拝謁記から取り上げられている部分の感じでは、昭和天皇は責任感が強く、良い(悪いかな?)意味で、帝王学を学び実践して方だなと思いますわ。ただ、状況を知り、高所から判断できたのは田島氏の方だったな。まあ、年齢も上だったし。2023/11/11
Oki
1
昭和天皇の考え方が臨場感をもって垣間見れてとても興味深かった。 戦時中の日本軍と今の中国人民解放軍やロシア軍はとても近いように感じた。 自分の能力以上の権力をもった時、それにどう相対するかで人は試される。 そういう試され方をされなくて本当によかった。 2024/04/15
akaDT666
0
大学時代のゼミ教授の著作。興味深い内容で、本書の中に出てくる新しい史料の公開が待たれる。 私が卒論で言及した2・26事件と秩父宮の関係について、真実はどうあれ昭和天皇は私が導き出した結論と同じように考えていたことが垣間見られる一節があり、とても嬉しく思った。2023/08/07
kuronyann
0
日本各界のトップの責任の取り方は昭和天皇のそれと通じるものがあると思っていたがやはりと首肯するところがあった。38頁以下に記載されているがだれだれが無罪とは許せないとか、「死刑でなきは不思議」とか、大元帥であった者が言うのだから続く者が便乗するはずだ。 共産主義をどのように捉えていたかは分からないが反共主義者であることが随所に出てくる。 驚いたことは憲法の中身を知らないこと。再軍備のための憲法改定を望むのだが国民投票が必要なことを知らずに「そんなものが入るか」と驚いている(103頁)。知識が増えた。2024/03/25