出版社内容情報
想像もしていなかった者になった自分。なぜ自然なのか。根幹は何か。希望と安らぎに満ちあふれる太陽の光と表裏一体になった暗黒の恐ろしさこそ、自然の本質ではと感じた幼い日。世界を見るために、伝えるために撮る。人の世界でしか生きられないから。第一線で活躍する写真家がたどる記憶と信条に迫るフォトエッセイ。
内容説明
記憶をたどり、自分を見つめなおし撮影対象を見つめた『日本カメラ』誌の好評連載が一冊に。毎月、日々重ねる動物との対峙や撮影への考えを掘り下げる。自然や人とのつながりを大事に、自分も同じ地球で生きている仲間と日々感じている、前川貴行の流儀が伝わってくる。
著者等紹介
前川貴行[マエカワタカユキ]
1969年、東京都生まれ。動物写真家。エンジニアとしてコンピューター関連会社に勤務した後、二六歳の頃から独学で写真を始める。97年より動物写真家・田中光常氏の助手をつとめ、2000年よりフリーの動物写真家としての活動を開始。日本、北米、アフリカ、アジア、そして近年は中米、オセアニアにもそのフィールドを広げ、野生動物の生きる姿をテーマに撮影に取り組み、雑誌、写真集、写真展など、多くのメディアでその作品を発表している。2008年日本写真協会賞新人賞受賞。第一回日経ナショナルジオグラフィック写真賞グランプリ。公益社団法人日本写真家協会理事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けんとまん1007
48
前川さんの著作を続けて3冊目。写真展に行ってきた記憶を、深めることができる。写真展でも掲示されていた文章が、全文書かれているので、前川さんの視点・視座・思想がじんわりと伝わってくる。本当に、よく考え、よく行動し、よく振り返っている方であり、そこブレがない。だからこそ、こんな写真が撮れるのだろうと思う。機材云々もあるだろうが、それ以前の部分が大きい。写真撮影に限らない思想だと思う。2024/08/27
たまきら
38
この人の類人猿の画は、ちょっと他にないような孤高の尊さを放っている。このまま一緒に森の中に迷い込んでいってしまいたくなるほど、魅力的で、美しく、少し物悲しい。ドキッとさせられる写真と、取材を優先し子どもの出産を見逃した写真家の言葉にふと、自分が生まれた時の父親を思った。当時社会部にいた父親は、三里塚で成田空港に反対する人たちと一緒に地下にもぐっていたそうだ。自分たちの上にアスファルトを流し、人柱にしてしまえばいい、と叫ぶ人たちの中で父は私と母のことは思ったのだろうか。2024/06/22
booklight
25
どんなことを考えながら写真をとっているか。それが絵でもなく文字でもなく、写真というのがよくわかる。その瞬間を素早くとらえて、また次の興味に対象に向かう。そんなスピード感がいいのだろう。『こんな写真が撮りたい』という想いが写真に出ているので、他の写真家にはない感じが出ている。アップだったり、グロテスクだったり、人情的な部分があったり。興味の対象も広がって淡水魚まで撮るようになってしまったと書いたり、自分のことを割と正直に書いているので生態がわかって面白いし、その成長も見て取れる。今後どうなっていくか楽しみ。2024/06/01
kaz
2
一つ一つの写真から、動物等の迫力が強く感じられる。図書館の内容紹介は『第一線で活躍する動物写真家が、記憶と信条に迫るフォトエッセイ。日々重ねる動物との対峙や撮影への考えを掘り下げ、その流儀を伝える。「日本カメラ」連載に写真を追加構成しまとめる』。 2023/04/19
たいき
1
表情がダイナミック。写真を撮りたくなると同時に写真を撮るのを諦める理由になる一冊。 エッセイが良かった。自分が写真家であることをどう表現するのか。人の感情を動かす写真を撮る。それだけじゃない物語を感じました。2023/07/08