内容説明
「消された歴史」と向き合う―瀬戸内海に浮かぶ島・大久野島。野生のウサギが生息し、観光客でにぎわうこの島は、昔、地図から消されたことがありました―。
著者等紹介
今関信子[イマゼキノブコ]
1942年東京生まれ。東京保育女子学院卒業。幼稚園教諭を経て創作活動に入る。日本児童文学者協会会員
ひろかわさえこ[ヒロカワサエコ]
1953年北海道小樽市生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Nobuko Hashimoto
25
史実を基にした児童文学。滋賀の女子中学生がYWCAの活動で広島を訪れる。顧問の意向で同じ広島の大久野島にも立ち寄った中学生たちは、この島でかつてつくられていた毒ガスの工場で働いていたという毒ガス資料館元館長から、当時の様子、毒ガスによる健康被害、兵器として使われた中国の被害者との交流などについて話を聞く。作者自身も被害を受けた中国の村にも行ったとのこと。2016年の作品にしては言葉遣いが古くて今の子どもが親しみを持てるかは微妙だが、大久野島の被害と加害をわかりやすく臨場感をもって書かれている。2023/03/18
絵本専門士 おはなし会 芽ぶっく
13
写真集『うさぎ島』 https://bookmeter.com/books/9976263 と一緒に読了。現在はうさぎ島として有名ですが、第二次世界大戦では毒ガス兵器を作っていた島。一時地図からも消された、負の歴史がある島を、主人公香織がどう感じたのかが書かれています。加害者でもある日本の歴史が語られています。2020/10/26
なま
11
★4 戦争と言えば1945(昭和20)年8月6日8:15 投下目標の優先度から広島へB29エノラゲイから人類史上初原子爆弾リトルボーイが投下された。 しかし戦時中の大久野島(広島竹原市忠海の沖合約3キロ)で日本軍が戦闘用の毒ガス製造していた事実はあまり知られていない。本書は【消されようとしている歴史】をテーマに大久野島の兵器製作所について語られる。当時14才だった毒ガス資料館館長と現代の中学生の交流。世間が間違った方向に進む時、自分達に何が出来たのか?日本国憲法の意味。普遍的問題の回答を探し求める。2022/01/22
マツユキ
11
三十年程前の修学旅行では、広島と一緒に大久野島へ行ったなあ。懐かしさもあり、この本を読みました。中学生になり、YMCAに入った少女たちは、大久野島で、毒ガス資料館の元館長に出会います。少女たちと同じ十四才の時に、大久野島に来て、働き始めた館長さん。体を壊したら一人前と言われる過酷な状況の中、誰にも何も言えず、友人たちも去っていく。終戦、それからの館長さんの物語を、少女たちはどう思ったか。衝撃な内容ですが、登場人物の明るさもあり、すっと入ってきました。タイトルのバトン、この本自体がそうあって欲しいです。2021/09/25
ほんわか・かめ
10
地図から消された島・大久野島。14歳で島に渡り、毒ガス製造に携わるようになったこと。毒ガス焼けは一人前の証。しかし薬品や毒ガスの影響で体に異常をきたした人も多い。軍国主義のせいで製造に従事させられ被害を受けたと思っていたが、その毒ガスは実際に中国で使用され死に至った被害者がいた事に気付かされる。日本国憲法で国民主権が明記されている今、日本が戦争を始めたらそれは国の責任ではなく、国民の責任だ。国民一人ひとりが意志を示さなくてはならない。《戦争は一気に始まらない。季節が変わるように少しずつ近づいてくる。》2025/03/21