内容説明
国と国との戦争がなくなり、各地の紛争は企業が調停するようになった近未来、和菜にあるミッションが与えられる―。
著者等紹介
濱野京子[ハマノキョウコ]
熊本県に生まれ、東京に育つ。早稲田大学卒業。『フュージョン』(講談社)でJBBY賞、『トーキョー・クロスロード』(ポプラ社)で坪田譲治文学賞受賞。日本児童文学者協会会員
白井裕子[シライユウコ]
カナダ生まれ。武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科テキスタイル専攻卒業。作家として制作活動に励みつつ、イラストレーター、美術講師としても活動している。子どものための造形絵画教室主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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純子
23
トーキョークロスロード以来ハマっている作家の、今度はヒリヒリするような話だった。17歳の和菜が、アイロナ共和国の内紛の調停に出向く。時は、少し未来に設定されているが、彼女が調べる「今日はなんの日」によって歴史に触れつつ“今”を考えさせられる。それで、グローバル企業が紛争の解決をうたいながら、一方で武器を売ったり傭兵を送ったりするという未来に真実味が加わっているように思う。人は争いから何を学んだのか、争いにさえ大義名分として平和が使われる、平和とは闘わないことではないのか、というマナト市長の言葉が重い。2017/11/16
かもめ通信
22
著者には青春真っ只中の胸キュンストーリーが得意な児童文学やYA小説で活躍中の作家というイメージがあったのだが、最近は若者向けの社会派小説を積極的に書かれているといるようだと伝え聞いて興味を持って読んでみた。物語の舞台はグローバル企業が世界を支配し、格差社会がより進んでいる近未来ディストピア。弱冠17歳の女の子が“国際紛争”に首を突っ込んで調停役に挑むというのだが……。中盤までなんとも白々しい“国際貢献”だと心の中で悪態をつきつつ読んでいたのだが、いやはやこれは!思わず著者に謝りたくなるような力作だった。 2017/03/15
杏子
21
平和について、とても重要な問いかけをしている作品で、勉強になる部分も多かったし、これを若い人に読んでほしいとも思った。が、自分としては濱野京子さんの新作ということで手に取った一冊であり、もっと濱野さんらしい(?)、主人公の葛藤や悩みを中心に描くものかと思っていた。そこのところは少しはずれてしまい、戦争の犠牲になった人びとや扮装地域の現実を描くドキュメント物の印象が強かった。それはもちろん悪くはないけれど、小説としてはどうなのだろう?もう少し主人公、和菜の現実と絡み合うような内容だったらよかったと思う。2016/08/18
ぴょこたん
16
濱野京子さんの最新刊なので読む。近未来、女子高生が紛争調停役として派遣される話。ネット社会が広がったおかげで、私たちは多くの情報を手軽に手に入れることができるようになった一方、抹殺される情報もあるのだということ、ネットで見た記事をそのまま鵜呑みにすることの怖さ、そんなことを学んだ。大きな声の人が正しいと取られる世の中・・・気をつけよう。2016/07/19
なま
10
★4.5 タイトルの言葉を戦争に参加するための「魔法の言葉」にしていないか? 物語の主人公和菜(17)はアイロナ共和国の内紛解決のため、の辺境の地マナトに視察に向かう。そこで見た物は・・。 「今日は何の日?」と過去の出来事と今を関連づけ、自分の目で紛争の状況を知ろうとする和菜は報道と現実の差に驚く。政府が「平和維持」「テロとの戦い」という大義名分を使う時、立ち止まらなければならない。犠牲者の多くは遠隔操作による空爆被害者。加害者は被害者を隠す。だからこそ知る事で私達は考えなきゃならない。2022/03/19