内容説明
歴史資料・美術品として第一級の重要文化財!凄惨な大戦を経験した400年前の先人たちは何を告発するのか。現代に生きる我々はそこから何を読みとるべきか。元大阪城天守閣館長が壮大なる“反戦画”を解き明かす。
目次
1 「重要文化財大坂夏の陣図屏風」の来歴
2 徳川方の布陣
3 豊臣方の防戦
4 殺し殺される合戦の実態
5 落城の悲劇―逃げ惑う人々
6 侵略軍による狼籍
7 描かれた豊臣大坂城
8 「屏風」の示す景観
9 大坂残党狩りと豊臣家断絶
10 「屏風」の制作者と伝来の謎
著者等紹介
渡辺武[ワタナベタケル]
1937年、兵庫県生まれ。京都大学文学部史学科卒業。高槻高校教員を経て、1962年、大阪城天守閣学芸員。73年、同主任、92年より館長、2000年退職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
京都と医療と人権の本棚
感想・レビュー
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roatsu
9
美術的だけでなく、現実の一コマを切りぬいた史料的価値も高い屏風なのだ、と改めて息を呑む。華やかな英雄譚にのみ目が行きがちな戦国の戦が呈した凄惨な様相を知ることができる。幕府も開かれて新秩序ができ始め、同時代で最後となる戦とはいえ戦場で繰り返されてきた乱暴狼藉は変わることなく、在阪庶民と落城する豊臣勢を襲った惨烈な運命には言葉も無い。かかる時代の果てに日本人が世の安定を望んだことは必然だったとしみじみ思う。ゲルニカという言葉は本を印象付ける上では強く響くがやや安直か。もっと適当な題名があったような気も。2016/11/03
チェアー
5
大阪冬の陣、夏の陣は、一般市民を巻き込んだ悲惨な内戦だったことが実感として分かる。ドラマでは武将の活躍しか出てこないが、その裏には逃げ惑い、悲嘆にくれる多くの市民がいた。自分がこの時代に生きていたらどうだったろう、と思うと胸が締め付けられる。すごい屏風です。おすすめ。2016/02/21
YASU
1
日本人は大河をはじめ戦国時代劇が大好き、武将たちの勇ましい戦いに心躍らせる。しかしこの特異な絵図は、大坂夏の陣の悲惨さを冷徹かつリアルに描きだしている。かつて坂本龍一氏は「武士って人殺しが仕事でしょ」といったそうだが、まさにそのとおりだと思う。凄惨な殺し合いや民衆への暴虐を英雄譚としてのみ語り継ぐことの延長上には、先の大戦をも美談にしたがる歴史修正がある。どんな戦いも本質は殺戮なのだ、それにしても、当時の戦をそうした視点で描いた絵図があったとは、これはぜひこの目で見てみたい。2023/12/11
Takahiro Tashiro
1
戦国時代はなにかと小説やテレビになるけど、やっていることは日本の内戦で戦争であって、関係のない非戦闘の庶民が巻き添えをくらうのは、世界共通なんだなと。屏風はナマで見てみたいなとおもう。2016/12/08
onepei
1
このごろ真田丸ネタでよく登場するこの屏風、何度か見たことがあるけど、ここまでじっくり見たことはなかった。今度じっくりみてみよう。2016/02/03