内容説明
大谷刑部少輔吉継。石田三成との友情に殉じ、味方の裏切りが相次ぐ関ヶ原の合戦で不運の死を遂げた名将である。だが、抜群の人気を誇る武将であるにもかかわらず、両親の名や出生地も定かではない吉継の生涯は、多くの謎に包まれている。本書は、遺された吉継発給の文書などわずかな史料を駆使して、その生涯をできるだけ詳細に再現した。若き日の姿、領主としての姿、病に苦しみながらも友のために戦う姿など、単なる「悲劇の武将」というイメージではとらえることができない、「人間・大谷吉継」の魅力に迫る。
目次
第1章 徹底検証 大谷吉継の実像(出自―豊後説と近江説;母親「東」の周辺;刑部少輔任官まで;敦賀城主となるまで;小田原参陣から奥州仕置へ;朝鮮出兵と吉継;病との共生;究極の選択;その死と伝承)
第2章 大谷吉継激戦譜(賎ケ岳合戦~小田原合戦;文禄・慶長の役;関ヶ原合戦)
第3章 大谷吉継をめぐる人物群像(秀吉の側近・奉行の変遷と大谷吉継;大谷吉継の閨閥;大谷吉継をめぐる情報ライン;大谷吉継を裏切った男たち;大谷吉継の子孫たち)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
今ごろになって『虎に翼』を観ているおじさん・寺
15
永録8年誕生説に従えば享年36歳。そんなに若かったのは意外。映画『のぼうの城』の山田孝之のカッコイイ吉継のイメージがあったが、忍城攻めの頃は既に業病に侵されていたのか。生前『千人斬り』の噂を立てられる等興味深い記録も。短い人生なので合戦に参加した記録ばかりでエピソードは少ない(少年時代のヘマで毛利を裏切った武将を切腹させてしまった事くらい)。関ヶ原は敗戦だが、その負けがこの人の一生を照らしている。2013/10/11
emico
14
大谷刑部吉継の史料が少ない中で、丁寧に史実を出来る限り盛り込んで書かれていると思います。彼の事がもっと色々と分かるかなぁと思い手に取った1冊ですが、やはり史料が少ない故にこれくらいの描き方が限度なのか、もっともっとと欲する気持ちを完全には満たせたませんでした。とは言え、彼の人となりの素敵さは充分に伝わり、読む価値はあると思います!2015/04/27
灰色朱鷺
3
吉継の出自から関ヶ原までを解説した本。三成関連本に重なる部分も有るが、吉継を主格とした三成も見えるので西軍好きには楽しめる一冊。
BIN
3
大谷吉継の解説書。第一章で様々な史料から大谷吉継を詳しく解説してくれていて一番良い。出自については近江説と豊後説があるが、それより母親と思わしき人物から出自を推定しているのは非常に興味深い。他の章についてはどこの小説等にもあるのでどうでもよい。2013/02/09
amabiko
3
全体の約1/3を占める論稿、外岡慎一郎「徹底検証 大谷吉継の実像」だけで十分。ファンや作家の熱っぽい視点でなく、研究者の冷静なアプローチこそが、謎や伝承に包まれた吉継の人物像を明らかにしてくれそう。2013/01/21