内容説明
「願はくは花の下にて春死なんそのきさらぎの望月のころ」西行は歌で予言した通り、建久元年(一一九〇)二月十六日、花の咲き誇る満月の日に入寂した―その日から、西行は伝説の歌人となった。佐藤義清と名乗る北面の武士・西行は、二十三歳の時、妻子を捨てて突如出家する。歌と仏の道にひとり生きる一方で、崇徳上皇や平清盛、源頼朝、藤原秀衡ら時の権力者とも交渉を持ちつづけた。激動する時代と深く関わりながら、花にあこがれ歌枕を訪ねて旅立った。その矛盾に満ちた生きざまこそ、西行の最大の謎であり魅力だろう。中世という新しい時代を切り拓いた西行の数奇な一生と謎に迫る。
目次
西行の眼に映った清盛の時代
西行とその時代
北面の武士西行
西行をめぐる女たち
西行と高野山―勧進聖をめぐる謎
西行讃岐の旅―崇徳院鎮魂
西行陸奥の旅―歌枕と沙金勧進
西行の跡を慕う人々
著者等紹介
佐藤和彦[サトウカズヒコ]
1937年、愛知県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程単位取得。文学博士。東京大学史料編纂所助手を経て、東京学芸大学教育学部教授、帝京大学文学部教授を歴任。2006年逝去
樋口州男[ヒグチクニオ]
1945年、山口県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程単位取得。博士(文学)。現在、拓殖大学政経学部非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みじんこ
2
西行について8人の著者たちが様々な面から論じ、人物像を明らかにしている。やや内容が重複している部分、用語や歌の解説もなく淡々と進むものもあるため理解しにくい部分もある。樋口州男氏の崇徳院鎮魂の旅、最後の錦昭江氏の西行の死後の評価の論がよかった。錦氏の「時空を超えた鎮魂の適任者」という表現が印象深い。頼朝に弓馬のことを語ったエピソードからは、歌人であり僧であり、また武人の家柄であった、ということを象徴している。突然の出家遁世、歌才、そして「願わくは」の歌通りの死を迎えたことにより、西行は神格化されたと思う。2015/10/18
めぐ
0
ぺろぺろっと読みおわってしまった。もうちょっと詳しいのが読みたい。結局謎の多い人なので、ほんとに小説になっているほうがおもしろいのかもしれない。2012/04/10
坂田 哲朗
0
十数年前、桜の季節に西行庵を訪ねて吉野の奥千本に行った記憶がよみがえって来ました。しかし西行は高野山に縁が深い人物だったんですね。2012/02/08
真瀬朔人@マサ
0
西行という人物について平清盛や源頼朝といった歴史上の著名人とのエピソード等も交えて書かれているので、今まで知ることのなかった部分を知ることが出来たのは良かった。 けど、書かれてるのが基本研究がメインの方たちなのでどうしても「読んでるこっちも一定以上西行について知っている」事を前提としたような書き方をされている部分があって置いてけぼりを食らったような感じになる箇所が数箇所あったのは残念。オビで「NHK平清盛がもっと面白く!」みたいなアオリ入れてるんだったらもっと平易な説明を増やして欲しかった。2012/02/04
kyou
0
西行のことは歌の天才くらいにしか知りませんでしたが、この本を読んで新しい知識に出会い楽しく読めました。2012/01/24