内容説明
帰国を前にして皇帝代宗に謁見した第十四次遣唐使一行の前に、ひとりの娘が現れた。第十次遣唐大使として入唐しながら帰国できず、唐の朝廷に仕えて一生を終えた藤原清河の娘である。その忘れ形見・喜娘を父の故国日本へ連れてゆくよう申し渡される…。帰国した喜娘たちの運命を軸に、日唐交流の秘話とロマンを描く歴史文学賞受賞の表題作「喜娘」、梅の老樹から浮かび上がる下級官人の数奇な過去「惜花夜宴」、ほかに三篇を収録。
著者等紹介
梓澤要[アズサワカナメ]
1953年、静岡県生まれ。明治大学文学部史学地理学科(考古学専攻)卒業。93年、「喜娘」で第18回歴史文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鍵ちゃん
22
帰国を前にして皇帝代宗に謁見した第十四次遣唐使一行の前に、一人の娘が現れた。第十次遣唐大使として入唐しながら帰国できず、唐の朝廷に仕えて一生を終えた藤原清河の娘である。その忘れ形見・喜娘を父の故国日本へ連れてゆくよう申し渡される。帰国した喜娘達の運命を軸に、日唐交流の秘話とロマンを描く「喜娘亅、梅の老樹から浮かび上がる下級官人の数奇な過去「惜花夜宴亅、ほかに3篇からなる短編集。その中の「すたれ皇子亅が忍びよる恐怖を感じ、ゾクゾクしながら読んだ。最後の「嘉兵衛のいたずら亅だけが時代が違っていて読みづらい。2021/10/26
take5
13
基本、奈良時代が舞台の、いずれも非常に巧みな5篇。表題作「喜娘」は、遣唐大使を務めた藤原清河(帰国しようとしたが失敗し結局帰国できなかった)と唐人女性との間に生まれた娘の喜娘(きじょう。『続日本紀』に父親と名前が見えるだけ)が亡父との約束を果たすため日本へ渡る物語。同じく『続日本紀』に見える大伴継人(帰国時の遭難の様子も詳しい(迫力あり。本作のその部分の元ネタ)。奇しくも清河と同じ遣唐使時の副使大伴古麻呂の子)、羽栗翼と翔(別の唐人との合いの子)などを絡ませて、史実を基に想像の翼を大きく広げて描かれた名作2023/09/21
こまったまこ
7
奈良時代の短編集です。主人公はいずれも名もない人たち。興味深いお話ではあるのですがいまいち感情移入ができなくて残念でした。奈良時代の話を読むたびに思うのですが国全体が疲弊しているときに無理して大仏を造る必要があったのかな。吉備真備や行基のお話が読みたくなりました。2014/02/02
KT1123
5
奈良時代関連の短編集。唐に渡った藤原清河の娘喜娘が日本へ渡る表題作では、その時代に日本海を渡る困難さが詳しく書かれていた。長屋王の変を下人の立場から見た話、あちこち都を移した聖武天皇の放浪に辟易する下級官僚の話、文武天皇の子ながら母の出自のせいでこれも下級官僚に落とされた石川広成の話など、当時の市井の人の暮らしがわかりやすい。最後は少し毛色が違って、真贋謎な吉備真備の母の墓誌の謎を巡る話は、正直途中話が見えなくなってしまったけど、終盤「そういうことか!」と膝を打った。全般に読みやすくてよかった(^^)2024/06/08
真理そら
2
「すたれ皇子」に登場する聖武天皇のやさしさ弱さがいとおしい。すたれ皇子として生きても、天皇に即位しても自由に生きられない哀しさにしみじみとした気分になった。一番好きなのは「嘉兵衛のいたずら」。安らかな隠居生活を送っていてもいたずら好きのままでいられるのは、それまでの人生がしっかりと充実したものだったからなのだろうか。それとも人は誰でもいくつになってもそれほど変化しないものなのだろうか。2017/06/24
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