内容説明
明治三十八年(一九〇五)十二月十四日未明、第四子の出産をひかえ、産婆の到着を待つ夏目家。昨夜から悠然とかまえていた漱石だが、陣痛がはじまると同時に刻一刻と、せっぱつまった状況に追いこまれていく…。「猫」ならぬ「胎児」の視点で描き、話題を呼んだ歴史文学賞受賞の表題作をはじめ、家康の命で明国に渡り、皇太后の入れ歯作りをすることになった口中医(歯科医)の悲喜劇を描いた直木賞候補作「大御所の献上品」。眼科医土生玄碩を主人公とした「本石町長崎屋」。乃木大将の発明になる義手を贈られた兵士の困惑を描いた「乃木将軍の義手」。単行本未収録の「平手打ち鴎外」の五篇。異色のユーモア時代小説集。
著者等紹介
篠田達明[シノダタツアキ]
1937年愛知県生まれ。名古屋大学医学部卒業。「本石町長崎屋」で第8回サンデー毎日時代小説部門新人賞次席、59年「にわか産婆・漱石」で第8回歴史文学賞受賞。直木賞候補4回(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kaoriction
12
面白い!夏目漱石の第四子の「胎児」が語り部。歴史文学賞受賞作。鏡子夫人の陣痛が始まるが産婆が来ない…文豪としてのプライドと葛藤しながら「赤ん坊をとりあげるのは、このおれを除いて他に誰がいよう」と、孤軍奮闘ドタバタな夜が明けていく。「パパは世間の人たちからみれば立派な人かもしれないけれど」「欠点だらけの夫であり、父親にすぎないわ」描かれているのは、そんなフツーなパパ漱石。産婆になり臍の緒を切る漱石。そしてこれが後の「則天去私」に繋がる。他に直木賞候補作『大御所の献上品』など五つの短編集。『平手打ち鷗外』も◎2012/11/13
笛ミチル
0
1年以上かかって読み終わった。短編集なのでいちいち世界観に入り込むのが苦労したけど面白かった。読んで良かったと思った。2013/05/23
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