内容説明
鎖国下の江戸時代、日本でも全く独自の方法で円周率の計算に躍起になった男たちがいた―算聖とうたわれた師関孝和との葛藤を経つつ、ついに円周率の公式を明らかにした天才算術家建部賢弘の苦闘の生涯…。歴史文学賞受賞・日本数学会出版賞受賞の表題作「円周率を計算した男」、大酒飲みの奇才算術家に振り回される平野忠兵衛夫婦の大晦日の夜を描いた「初夢」ほか、「空出」「算子塚」「風狂算法」「やぶつばきの降り敷く」の六篇を収録。
著者等紹介
鳴海風[ナルミフウ]
1953年、新潟県生まれ。秋田高校から東北大学へ進み、機械工学専攻修了。1980年、日本電装(現デンソー)入社。1990年、第20回池内祥三文学奨励賞受賞。1992年、「円周率を計算した男」で第16回歴史文学賞を受賞。2006年、日本数学会出版賞受賞。日本文芸家協会会員・財団法人新鷹会理事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kaizen@名古屋de朝活読書会
108
和算に関する伝記なのか創作なのか。「天地明察」の関孝和とは違う側面を描写。「円周率を計算した男」建部賢弘。「初夢」平野忠兵衛。「空出」多賀清七郎。「算子塚」鈴木安明。「風狂算法」山口和。「やぶつばきの降り敷く」三吉。著者はデンソー勤務。2013/11/01
to boy
30
再読。和算の本というより江戸時代の和算家を主人公にした人情話6編。師弟の葛藤、恋愛、友情、派閥間の争いなど和算を巡る市井の暖かな話です。数学を極めれば商人でも武士に取り立てられるとか、地方のお殿様が数学に熱心であるとかあまり知られていなかった江戸時代の一面を垣間見たようです。2018/09/16
i-miya
29
2012.03.20(初読、初著者)鳴海風著。 2012.03.20 (カバー) 天才は算聖を超えられるか。建部賢弘(かたひろ)-若き算術家。和算の世界へようこそ! 独自の方法で計算することに躍起になっていた男たち。師、関孝和との葛藤。日本数学会出版賞(2006)。大酒飲みの奇才算術家、に振り回される平野忠兵衛夫婦の大晦日の夜『初夢』他、6編。ついに、文庫で登場、解説は上野健爾。 2012/03/20
i-miya
25
2012.03.26(つづき)鳴海風著。 2012.03.25 (登場人物) 建部賢弘=幕府祐筆、建部直恒の三男、八代将軍、徳川吉宗の側近となる、世界で初めて、円周率自乗の公式を発見。春香=賢弘の妻、幼馴染。建部賢明=(かたあきら)、兄、『大成算経』全20巻を兄弟で完成させる。関孝和=甲府藩勘定吟味役、独自の筆算法、ベルヌーイ数、行列式の発見、死後算聖、と呼ばれる。幸恵=その妻。2012/03/26
i-miya
21
2012.04.04(つづき)鳴海風著。 2012.04.02 一. 銀座始まって以来の困窮、極まった感あり。銀座役人60人。その年寄り=頭領。算勘の才、際立つ平野忠兵衛。銀改め後、大黒常是(おおぐろじょうせい)が世襲。金貨を製造する金座、その金改め役は後藤庄三郎、世襲。五才、『塵劫記』三巻のうちの上巻を修了、金銀両替利息計算、造作なし。関流、関孝和の若手算術家。息子夫婦、愛宕山の権現様からご来光を仰ぎます、とでかける、にしては早すぎるが・・・。2012/04/04