内容説明
咸臨丸による太平洋横断の快挙の陰に秘められた桑港残留水夫たちの異国での暮らしと海の男の絆を描く力作。第27回歴史文学賞受賞作。
著者等紹介
植松三十里[ウエマツミドリ]
本名・植松治代。昭和29年、埼玉県生まれ。東京女子大学史学科卒業。婦人画報社編集局、建築都市デザイン事務所勤務を経て、現在、建築・住宅等取材記者。平成15年、「桑港にて」で第27回歴史文学賞受賞
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感想・レビュー
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kawa
33
咸臨丸の米国初航海、目的地に到着も船内の劣悪環境で病に倒れ療養のためにサンフランシスコに取り残された船員たちの「桑港」と、幕末の横浜港で幕府や諸外国に石炭を商った片寄平藏の「燃えたぎる石」二題。マイ・ブームの植村さん初期作品。お得意の歴史のはざまの無名の人々取り上げ作品に魅了される。本作をもとに加筆編集されたという「咸臨丸、サンフランシスコにて」も何れ。「燃えたぎる石」の重要人物で登場の幕臣・永井尚志(なおゆき)のお墓のある日暮里御殿坂の本行寺を、一昨日偶然の散策中に発見もまたもや奇遇な縁。2024/12/24
ゆか
14
面白かったです。表題作は咸臨丸で帰国できなかった水夫のお話。同時収録の「もえたぎる石」は、石炭に目をつけた常磐炭鉱の開祖 片寄平蔵のお話。こちらも面白く読めた。「天誅」の一言で、殺されてしまったいろんな人々が、その後も、もし生きられたらどんなふうに変わっていたのか、知りたいと思った。ただただ、残念です。2014/03/10
プクプク
6
咸臨丸の水夫の話。冬の太平洋は大荒れだったそうで、水夫たちの布団や着物が水浸しになり、病気が蔓延する。重病化し、アメリカの病院にかつぎ込まれた。帰国時になっても隊員できない者がでた。その看病にあたるべく残留する咸臨丸の主人公ではない水夫の話だ。言葉の通じない異国で、日本に残した家族の思いなど描かれている。歴史小説を読むと今頃自分の勉強不足が思いしらされる。2019/05/28
mitsuru1
3
咸臨丸の水夫達にインフルエンザにより死亡したり入院した者があり、その看病のためサンフランシスコに残った者もいた。死亡者がいたことは聞いた覚えがあるが、数ヶ月後にアメリカ商船で帰国した者達がいたことは初耳でした。他に常磐炭鉱を開いた片寄平蔵の物語も収録。こちらも初耳でした。読み易いが熱い男達の物語である。2015/11/02
あいべきん
2
ちょっと途中で居眠りしそうになったけどw お勉強になりました。これほどの時代の変化の激しさを体験したことがないから、平蔵のような人を見て実際にはどう思うんだろう。今でこそ開明的な考えで素晴らしいと思えるけど、その当時だったら憎き海外に手を貸しやがって、ぐらいは思ったのかもしれない。2022/02/13