内容説明
歴史マネー小説の傑作!明治維新の激動期、新政府が布告した銀目停止令によって豊後臼杵藩の借財は5万両分消えることになったが…。金銀相場の変動に翻弄される臼杵藩士の姿を通して描く、銭の維新史。
著者等紹介
渡辺房男[ワタナベフサオ]
1944年、山梨県甲府市生まれ。東京大学文学部仏文科卒。NHKディレクターを経て、現在(株)NHKエンタープライズ21プロデューサー。1999年、「桜田門外十万坪」で、第23回歴史文学賞受賞。同年、「指」で第18回世田谷文学賞(小説部門)受賞。著書に、上記受賞作品を含めた短篇歴史小説集『桜田門外十万坪』(新人物往来社)、長編歴史小説『ゲルマン紙幣1億円』(講談社)がある
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感想・レビュー
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ケイ
57
東は金、西は銀、各藩は江戸屋敷もあれば大阪の蔵屋敷もあり、藩の財政はどちらで統一するのか、交換比率は変動か、両替商とはいかに力を持っているのか、と常々疑問であった。この話は、鳥羽・伏見の戦いから箱館戦争くらいまでが舞台なので、江戸時代の金銀の話ではないが、変動相場制や、交換比率の見極めによって財産が増減することなどがよくわかる。新政府は銀をやめて金に統一しようとすることで、銀での貸し手借り手に混乱が生じる。生き馬の目を抜く両替商や商人の闊歩する大阪では、損得勘定のできない武士はもはや力を持てなかった。2014/05/14
あかんべ
5
江戸から明治に、武士も体制の変化に対応するのに苦労したのであろうとは想像できるが、武家を支えていた札差たちも幕府の瓦解で、負債の回収に苦労した。この話はそんな世情のなかで大阪が銀決算、江戸が金決算だったことに世界に通用する国になる為に突然銀決算の廃止を、通告された臼杵藩勘定方の久野と、貸し方である紙屋与平次の騙し騙されの生き残りをかけての戦い。経済時代劇は、ちょっとと云われる女子もおられましょうが、結末の希望ある終わりも後味良く、敵味方に分かれた二人が、ああして酒を飲みあい話が出来る二人の懐の深さもちょっ2012/07/03
シュラフ
4
江戸時代、日本では金と銀という2つの通貨が並存していた。いわゆる"江戸の金遣い、大阪の銀遣い"である。明治維新により2つの通貨が存在する不便をなくすため金本位制度への一本化で交換レートの設定するにあたっての借手(各藩)と貸手(両替商)の攻防がこの小説の読みどころである。各藩の両替商に対する借財は大きく減ると思われたのだが・・・大逆転が待っている。 社会が変革される時、その前政権によって信認されていた貨幣の価値も大きく変わる、そんな当たり前のことを教えてくれる話である。2012/12/08
Tao Yamamoto
0
幕末廃藩時に大阪銀目停止における藩内の波乱を描いた小説
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- 和書
- 新・和菓子噺