内容説明
農業中心の歴史観に疑問を抱き非農業民の視点から新しい日本の歴史像を構築してきた著者が、最新の研究成果を基に海民の実像を明らかにし更なる歴史像を描き出す。
目次
海民と日本社会
海の領主 安藤氏と十三湊
能登の中世
東海道の津・宿と東西の王権
河海の世界 尾張・美濃
紀州の山村と海民
内海の職人・商人と都市
瀬戸内の島々 紙背文書にみる歌島
海上交通の要衝、宗像
世界に開かれた日本列島
新しい歴史学を拓く地域史研究
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鵐窟庵
8
日本が長らく農民社会であったと歴史の通説があるが、著者はそこに「海民社会」というもう一つの軸から日本の歴史を振り返っている。各国が諸外国との交易が盛んだったことや、日本海側が当時は貧しいどころか豊かだったことなどが記されている。そして農業国家=大地的=帝国的と定義し、その膨張主義や管理主義的な国家像として描き出されている。主要な期間が律令国家だった100年間と明治維新から敗戦までの70年間の170年でしか無いと論難している。むしろ通説から離れていて、日本の歴史に陰に「海民社会」があると壮大な話題であった。2020/07/17
めーてる
1
海や海の民に関わる、当時の常識を打ち破るような網野善彦の論文や、講演の内容が収められた本。2017/02/20
ヤス
1
歴史は正確には伝わらない。「百姓」という言葉からくる先入観で物事の本質を見誤っているとしたらそれはもったいないことだし、モノの見方を固定化してしまうことはとても危険だ。「高卒」とか、言葉のイメージで固定的な見方をしてしまう事例は他にも沢山あるだろう。「「生活する人の力に対する評価が、まだまだ足りない」という網野氏の自戒の言葉が身に染みる。2014/06/11
snsk
1
講演録や論稿の寄せ集めなので、各章言ってることはかなり重複してます。しかも「海民」と言いつつ、あまり海民じゃない内容が多いですが・・・でもまあ興味深いです。2008/11/15
t
0
百姓という言葉は農民を意味していない(近世でも)、水呑には豊かな海民が含まれていた、という内容。正しいのかどうかわからない。2010/12/20