内容説明
寛永十年(一六三三)、一人の若い牢人者がフラリと尾張名古屋城下に現れた。男は名を新珠尊之介といい、後醍醐天皇の血をひく南朝の皇胤であった。尾張は、家康の第九子である義直が支配していた。義直は無類の学問好きで、特に神道、儒学に造詣が深く、その敬神崇儒の考え方から、皇室をないがしろにする幕府のやり方に満腔の不満を抱いていた。とりわけ第三代将軍家光に対しては、叔父・甥の微妙な感情もからみ、両者の対立は一触即発の危機を孕んでいた。義直の前に、新珠尊之介が現れたのは、そんな折であった…。新珠尊之介と三種の神器の一つ「八坂瓊曲玉」をめぐって繰り広げられる巨大な陰謀。柳生十兵衛と尊之介の秘術を尽した凄絶な決闘。非情の暗殺と忍者の死闘。