内容説明
司馬遼太郎が言うのとは逆に、日本は明治維新の近代化路線からすでに間違っていた。長寿だけが価値になってしまった現代日本のニヒリズムに抗するには、保田与重郎と特攻隊の思想しかないのではないか、と佐伯啓思は問う。ニヒリズムはもともと人間の条件、金融危機はそれが露わになっただけにすぎない、人間のすべての表現活動において、いまこそ核心的な問いが問われはじめている、と三浦雅士は応える。対論4篇、論文2篇を収録。
目次
金融ニヒリズムと「現代の危機」
資本主義はニヒリズムか
思想の現在をどう捉えるか
大衆社会の不安
アメリカニズムを超えて
ニヒリズムとしての現代芸術
著者等紹介
佐伯啓思[サエキケイシ]
1949年奈良県生まれ。経済学者、評論家。京都大学大学院人間・環境学研究科教授。85年『隠された思考―市場経済のメタフィジックス』でサントリー学芸賞、94年『「アメリカニズム」の終焉―シヴィック・リベラリズム精神の再発見へ』で東畑記念賞、97年『現代日本のリベラリズム』で読売論壇賞、2007年には正論大賞を受賞
三浦雅士[ミウラマサシ]
1946年青森県生まれ。文芸評論家。84年『メランコリーの水脈』でサントリー学芸賞、91年、『小説という植民地』で藤村記念歴程賞、96年『身体の零度―何が近代を成立させたか』で読売文学賞、2002年『青春の終焉』で芸術選奨文部科学大臣賞・伊藤整文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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harass
47
題名と三浦が気になり借りる。経済評論家佐伯と三浦それぞれの短い評論と対談集。2000年初めごろの三浦が主催していた雑誌の対談で、当時のサブプライムローン問題などのことが話題になっている。正直いって、ああこういう本か、と軽く目を通しただけだった。経済についてと文化論は個人的にハードルを高く上げてよむので、ありきたりに感じると非常に冷めてしまうのだ。三浦の「ニヒリズムとしての現代芸術」は似た論考をほかの本で読んでいたので特に思うことなし。2017/04/24
yo
2
自分が普段から素朴に感じていたことが、言語化されていてることも多かったが、そこに至るまでの哲学的な系譜などは参考になった。全体としては資本主義のニヒリズム性を淡々とフラットに書かれていた、わりと悲観的ではなく考察的に書かれていたと思う。また、思想、経済、アメリカ、芸術とそれぞれの切り口で書かれていたために、資本主義というものに対する理解が深まった様におもう。偏りはありそうなので、異なる問題意識の人の意見を知りたいとも思った。2015/01/02
kei
0
最初と最後に対談する両社の言葉を置き、まず一章(かつ最新の対談)でこの本の主要な話はほとんど終わってしまう 残りは十年以上前にさかのぼって語られるアメリカと思想と経済とイデオロギー 色んな学者が現れては消えるし、その内の何人かしか知らないんだけど 基本となるニーチェのニヒリズムとナショナリズムに関しては個人の中で極めて有用な意見だと思う 特に一章の僕らが言葉によってあらかじめエートスを持ち、存在するくだりとか2016/04/13
koji
0
ニヒリズム=最高の諸価値の崩落。資本主義=貨幣=無意味なものを追求し、無意味なものを欲望すること。ニーチェが言うように、ニヒリズムはヨーロッパ文明が生み出した現象だとすると、ヨーロッパ文明の世界化であるグローバル資本主義は、世界的な規模でのニヒリズムをもたらした文明の危機になります。本書を要約すると、こうなりますが、本書は、古今の思想家等を縦横に駆使し、現代文明の危うさを論じるすぐれて哲学的な書です。2010/02/25