出版社内容情報
私小説作家・車谷長吉が、『赤目四十八瀧心中未遂』で直木賞を受賞する前後1年間の苦悩と煩悶の日々を綴った未発表の日記。
内容説明
日記文学のあらたな到達点。最後の私小説作家が綴った苦悩と煩悶の日々。
著者等紹介
車谷長吉[クルマタニチョウキツ]
昭和20年、兵庫県飾磨市(現・姫路市)生まれ。慶応義塾大学文学部独文科卒業。広告代理店、総会屋下働き、下足番、料理人などを経て、平成4年に上板した初作品集『鹽壺の匙』で藝術選奨文部大臣新人賞、三島由紀夫賞を受賞。平成9年に『漂流物』で平林たい子文学賞、平成10年に『赤目四十八瀧心中未遂』で直木賞、平成13年に「武蔵丸」で川端康成文学賞を受賞。平成27年5月17日、誤嚥による窒息のため69歳で死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いちろく
22
紹介していただいた本。平成十年春からの約一年間、伊藤整文学賞辞退からの直木賞受賞とその後の時期に車谷長吉氏が綴った日記。執筆から約25年後、没後約10年が経過して昨年出版された内容であるが、当時の基準と照らし合わせても、今の時代によく出版出来たなと思う。当時も裁判沙汰になったと言われるが、個人情報も無視したアケスケ過ぎる内容に読者の一人として「そりゃ、なるわ」としか言えない。ましてや、この本の登場人物には現在も存命の方もいるのである。それでも最後のページまで捲っていたのだから、不思議な読書体験でもあった。2025/04/25
チェアー
6
自分が作家であることの強烈な意識。その半面、作家でありたくない、アマチュアでありたいと願っていた。 書くために生きた人だった。寡作ではあったが、書くべきことを書いた人だった。 「赤目四十八瀧」は読まなあかん。 2024/08/21
sputnik|jiu
4
先日、大いに体調を崩したのだが、そうするとその日の体の具合とか便通の回数とか、そのぐらいしか記録すべきことはないのだなとしみじみと実感した。 それにしても、おそろしいほどにたくさん本を読む人だったんだな。2024/09/11
小谷野敦
4
25年前の直木賞受賞の年を中心にした日記で、当時文春の依頼で書かれたものだがどこでも出してもらえず、車谷死去ののち高橋順子が遺稿を発見したが、個人の名誉を損なう記述が多いので、一番問題の夏目漱石の息子のところで女中をしていた叔母が94歳で死ぬのを待って、問題のある箇所は人名を「よ氏」などとして刊行。しかし一番よく出てくる筑摩書房の「よ氏」は、翻訳刊行した著作名が書いてあるので分かってしまう。全体に強迫神経症で苦しんでいるのはともかくやたら嘔吐しているので、よく生きているなあと感じる。あと前田速夫との確執2024/09/04
Ryu
3
車谷車谷。とにかく車谷だ。この作家を読まなければ。未発表の日記。未発表だった理由は明確で、内容が多方面に差し障りありまくりだからだ。とにかく悪口!あとは精神病の苦悶。そんなことをいつもの車谷節で書いている。車谷を知らん人がいきなり読んでも、「このおっさんいっつも同じこと言っとる!」となるだけでおもしろくないだろう。俺は車谷が好きなんだ。2024/07/24