内容説明
あの人を涙で殺しました…イラストレーションの巨匠A・ラッカムが贈る水の妖精ウンディーネと騎士の物語。小学3年以上。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アナーキー靴下
66
ラッカム挿絵の『ウンディーネ』、以前持っていたこともあり少なくとも二読目。光文社新訳で読んだフケー版と比較するとかなり印象が違う(そして本書の方が私にとっては長らくウンディーネの物語のイメージだった)。割と筋書きの細部までなぞっているのだが、ウンディーネの、前半の弾むようなあやかし的な雰囲気、後半の貞淑の檻に閉じ込められどこか色褪せた雰囲気、そうした抒情性が弱いように思う。とはいえラッカムの絵が、文章からは読み取り切れないウンディーネの変化を表現しており、絵と文で完成された物語ということかもしれない。2023/10/23
ケロリーヌ@ベルばら同盟
59
【第196回海外作品読書会】ドイツ後期ロマン派のM.フーケの代表作を、A.ラッカムの装画が彩り、岸田理生が端麗な筆致で翻訳。魔の棲む森に、白馬の蹄音が響き、湖畔の杣屋の漁師の養い子は、美々しい騎士に見出される。風と戯れ、水と歌う天真爛漫な少女の名はウンディーネ。水魔の王女は、愛を知って、初めて魂を得る。騎士と結ばれ、貞淑で慈悲深く、聡明な女性に変貌してゆく娘に比して、愛される事に慣れ、愛する事を怠る人間の弱さ浅ましさ。文章が音楽を奏で、装画が場景を顕現する。夢幻の舞台を掌中に戴くような、極めて贅沢な一冊。2022/01/14
天の川
52
学生の頃に、アーサー・ラッカムの絵が見たくて手に入れた本。ラッカムの絵が満載。そして、劇作家でもある岸田さんの訳の何と典雅なことか!小さなフォントで100ページ以上もあり、まさに大人の絵本。気まぐれな水の娘ウンディーネが騎士と結婚することで魂を得、貞淑で愛に生きる女性となるのに対し、騎士は不実で、その愛人は驕慢だ。裏切られると愛する人の命を奪わなければいけない運命の水の娘。ラストの「あの人を涙で殺しました」というウンディーネの言葉が哀しい。⇒2021/12/15
Romi@いつも心に太陽を!
19
【再読】眩暈がするほど美しくも悲しい恋物語。愛によって魂を得た水の娘ウンディーネ。騎士と結ばれてなお、気まぐれな男心に振り回され、水の掟には縛られあまりにも不憫。基本的に登場人物たちはみな煮え切らない性格です。ベルタルダは自業自得ですね・・・。ラストがあまりにも美しすぎる。「あの人を、涙で殺しました・・・」でとどめ。訳がまた素晴らしい。2011/01/27
凛
11
ウンディーネは水そのものがそうであるように、自己投影の装置でしかなくフルトブラントは結局の所自分に殺されたのでは?意味の持たない綺麗な水に意味(魂)を与え、それを愛し、疎い、憎み、殺される。自らの愚行の程を理解してたからこそ、死から眼を背けず受け入れた。仮初めの魂の言葉であろうが最後に放つ一言はあまりに悲しく美しい。ちなみにアーサーラッカムの絵を見るためだけに読みました。素晴らしかった。2013/08/08
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