出版社内容情報
俊英の力作
見る者の魂を震わさずにはおかないゴッホの作品。その核にある宗教性の内実=作品がはらむ〈聖なるもの〉の秘密、またゴッホとキリスト教および教会との関係を、書簡と作品の徹底的な分析を通して明らかにした俊英の力作。オールカラー38頁の口絵。
【目次より】
第一章 キリスト教との関わり
第一節 生い立ちおよび精神的軌跡
第二節 娼婦にイエスを見る
第三節 真のイエス理解
第四節 宗教史的・文化史的背景
第五節 《開かれた聖書のある静物》──分身
第六節 教会への愛着と嫌悪
第二章 ゴッホの「イエス」
第一節 報われぬ生涯
第二節 ゴッホの職業 イエスの職業
第三節 不幸な生涯の先に見ていたもの
第四節 ゴッホにとってのイエス
第五節 自画像といのち
第六節 《善きサマリア人》──両極の融合
第三章 ゴッホの「太陽」
第一節 《種まく人》の太陽──記号性からの逸脱
第二節 《種まく人》と《刈り入れる人》──生と死
第三節 《囲まれた麦畑と日の出》と遠近法
第四節 《精神病院の庭》──万物の融合
第五節 《ラザロの復活》とゴッホの実存
正田倫顕[ショウダトモアキ]
1977年生まれ。東京大学教養学部卒。ルーヴァン大学に留学、ゴッホに関するフィールドワークに従事。所属学会は美術史学会、日本宗教学会、日仏美術学会、日本基督教学会。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
一郎二郎
3
《オーヴェールの教会》イエスを囲っていた教会は倒壊寸前、その中にイエスはいない《自画像》人生の挫折のなか、力尽き果てた自分の中に、己を生かす力が蠢いている事に気づき、驚いているゴッホの顔。この生命の力は万物に偏在していた《良きサマリヤ人》救う者と救われる者が抱擁しあい、最も高貴な者が最も悲惨な者と通じ合う驚異的な次元。そこにゴッホはイエスを見た。それは融合し渦巻く世界だ《種まく人》想定を超えて輝く太陽、すべてが光である聖なる世界《刈り入れる人》死を超えた生へ《ラザロの復活》イエス=ラザロ=太陽=ゴッホ2024/02/08
ソーダ
1
ゴッホを理解する上で、キリスト教は欠かせない要素です。ただ私はキリスト教についてあまり知識がないので、食わず嫌いなところがありました。ですがこの本を読んで、キリスト教とゴッホの深い関わりがよく分かりました。著者のゴッホへの敬愛の情があふれていて、ゴッホの絵の見方が変わりました。本物の芸術論を読めて、感動しました。2021/01/25