内容説明
われわれの関心は「言葉の上の出来事」にしかない。そして言葉の上の出来事こそが理解という冒険の出発点となり得る。―フライへの、フライ自身による、最高の入門書。
目次
第1章 言語のダブル・ヴィジョン(くるくる変る時代、一九二五年~一九九〇年;未成熟社会と成熟社会;言語の危機)
第2章 自然のダブル・ヴィジョン(自然界と人間界;批評と文明;自然をあがなう)
第3章 時間のダブル・ヴィジョン(空間と時間;時間と歴史;時間と教育)
第4章 神のダブル・ヴィジョン(神々と神;ユダヤ的伝統とギリシア的伝統;隠喩的な一義的意味;人間化された神)
著者等紹介
フライ,ノースロップ[フライ,ノースロップ][Frye,Northrop]
1912‐1991。カナダの文学研究家・文学理論家。トロント大学で哲学と英文学を専攻した後、同大の神学校に進みカナダ合同教会の牧師資格を得た。母校の英文科で教鞭を執り、学科長、学長等を歴任。シェイクスピア、ブレイク、エリオットらの解釈に新機軸をもたらした
江田孝臣[エダタカオミ]
1956年、鹿児島県に生まれる。千葉大学人文学部卒業。東京都立大学大学院博士課程退学。中央大学経済学部助教授を経て、早稲田大学文学学術院教授。専門はアメリカ文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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∃.狂茶党
1
邦題の「言語」は、「言葉」と訳すべきだったのではないか? 作者は、敬虔なキリスト教徒であり、牧師の資格も持つが、地上のキリスト教のあり方について、過去の悪行については、きちんと、時にユーモアを交えて批判もしている。 奇跡については、心理的な、しかし、体験もしくは、悟りのような認識の変換とみなしているようだが、それは、本題とは違うようである。 機械的反復ではなく、欲望や、村の掟ではなく、広い視点からの批評的態度を持ち続けること。 愚かさに転がり落ちやすき国家の解消が、神の国につながる道筋にある。 2021/07/29
akuragitatata
0
物質世界とは別に霊的――としかいいようのない世界がある。そういう世界はあり続ける。社会においても、日常においても、言語にも歴史にも。しかしそれを明らかにするのは神学ではうさんくさすぎ、歴史学では実証性にかけ、文学研究者が登場する。そこでフライだ。フライは宗教的情熱と冷静さをはかりにかけつつ、狂信や妄想とはっきりした一線を画する隠喩と一義的な用法を語り尽くす。共産主義の嘘、資本主義の夢、事実と教訓。それら第二義的なものへの目の向け方を徹底して、しかも明瞭に語っている。フライで一番わかりやすい本あっぱれなり。2017/06/28
ルアーブル
0
ラビリンスにひたる悦び。2023/01/14