内容説明
ナチが全権掌握した1933年に行った特別講義「現在の状況における神学の課題」、アーリア条項導入を批判する「アーリア人」、34年のマールブルク大学礼拝説教「創造者なる神への信仰」の3編を収録。神学的思惟と政治的思考との緊張関係を証言する貴重なドキュメント。実存論的聖書解釈を標榜した神学者は、はたして非政治的だったのか?
目次
解題 ルター派ナショナル・コンサヴァティヴとしてのルドルフ・ブルトマンの政治的精神(深井智朗)(ヴァイマールの聖なるフロント世代としてのブルトマン;初期ブルトマンの政治的立場、あるいはナショナル・コンサヴァティヴとしてのブルトマン;収録した諸論文について)
1 現在の状況における神学の課題(一九三三年)
2 アーリア人―教会の領域における条項(一九三三年)
3 創造者なる神への信仰(一九三四年)
著者等紹介
ブルトマン,ルドルフ・カール[ブルトマン,ルドルフカール] [Bultmann,Rudolf Karl]
1884‐1976年。ブレスラウ、ギーセンを経て、1921年から1951年までマールブルク大学の新約学の教授。聖書の「脱神話化」、「実存論的解釈」を提唱したことで知られている
深井智朗[フカイトモアキ]
1964年生まれ。アウクスブルク大学哲学・社会学部博士課程修了。Dr.Phil.(アウクスブルク大学)、文学博士(京都大学)。現在、金城学院大学人間科学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いとう・しんご
1
ヒトラーが独裁制を確立させた'33年の論文2本と'34年の説教1本を採録。いずれも民族主義に反対する内容でブルトマンの大胆で勇気ある発言を伝えている。特に説教では「神」と「被造物」を「存在」と「無」と語り、ハイデガー的でナチス的な民族主義的偶像崇拝を明確に否定する説き明かしは感動的で、キリスト者必読。「ナチズムとハイデガー」を読んだ直後でもあり、両者の分岐点がとても鮮やかに浮かび上がる書。ただし、監訳者は論文捏造で有名になった人。まさか、ブルトマンのテキストまで捏造ということは無いと思うけど・・・2021/08/29