感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
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同質化した集団の中での互いの対抗意識が招く集団の危機が、ほとんど恣意的に選ばれた一人を殺すことで回避される。それが文化の起源である。無罪なのに殺される不条理を体現した福音書のイエスがいかに革命的だったか。理性を失って暴走しようとする群衆に、無罪な者がまず石を投げよと説くことの新しさ。学校や会社でのいじめにしても死刑制度にしても、暴力で集団を安定させるという発想から未だに自由になれない。A.ロイの『小さなものたちの神』で、袋叩きにされた男が実は無罪だとわかる場面を思い出しながら読んだ。2018/04/30
いとう・しんご
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対談形式になっていて読みやすい。ジラールを知りたいという人にはお奨め。ミメーシスを他人に対する妬みや羨望、と理解した上で、社会全体がそうした無限の欲望に囚われた時、暴力を制御するためにスケープゴートを必要とする、しかも、それは供儀として反復され神話化し、かつ、人々は自らの暴力性を正当化する、というジラールの指摘は震撼に値する。人身御供を行わなかった社会が存続できなかった一方、行った社会は神話の背後にそれを隠蔽した、という説明も理になかっている。2020/04/04




