内容説明
統治に与してきたキリスト教は、ときに、まつろわぬ者たちの生存と抵抗の拠点ともなってきた。その歴史と思想に秘められたアンチノミーにいどむ。著者たちによる白熱のトークセッションも併録。
目次
1 身体・秩序・クィア(「クィア」な知の営み―周縁から規範を徹底的に問い直す;教会をめぐるクィアな可能性―“怒り”の回復とその共同性に向けて;セックスワーカーの人権を考える―「女からの解放」か「女としての解放」か;Talk Session1 キリスト教=性規範の臨界点)
2 自己・神・統治(天皇のてまえと憲法のかなたで―公共性から自然へとおりていくために;キリスト抹殺論―ナザレのイエスはアナキスト;「いまだ分離されていない世界」を求めて―キリスト教アナキズムについて;Talk Session2 離脱するキリスト教=アナーキー)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
29
セクシャルマイノリティやセックスワーカーとしての当事者性に基づく切実な問題意識のはっきりした3人の女性の論考に比べて3人の男性のそれはちょっと夢物語のようだった。「わかりやすいようにはしてやらないぞ」と、あえてカミングアウトをしないという形で抵抗する佐々木氏の発言が興味深い。属性を明らかにするやいなや、同情にせよ差別にせよ、属性による分断が始まる。いかなる属性も脱ぎ捨てて、たとえばカーテン越しにその人の歌を聴くようにして、個人と個人が聴きあうとき、ほんとうの共同性への契機が生まれるのかもしれない。2020/05/24