内容説明
アイゼンハワーからオバマに至る歴代大統領と親密な関係を結び、彼らの政策に有形無形の影響を及ぼした宗教家の、主に冷戦期70年代までの思想と行動を“福音伝道者”という観点から解明した俊英の力作。
目次
序章 ビリー・グラハムとアメリカ
第1章 ビリー・グラハムという人物―ファンダメンタリストと「福音派」
第2章 「罪」の神学と「福音伝道者」としての職務観―理論的背景
第3章 冷たい戦争と魂の危機―「反共主義」とマッキンタイア
第4章 大統領の聖所と神殿―「サイレント・マジョリティ」とニクソン、ピール
第5章 「神の下の国家」の再建案―「市民宗教」とハットフィールド
結論
著者等紹介
相川裕亮[アイカワユウスケ]
1988年生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学。博士(法学)。現在、広島大学大学院人間社会科学研究科助教。専門は、アメリカ合衆国の政治史、政治思想史、キリスト教史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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BLACK無糖好き
15
福音伝道者ビリー・グラハムの神学と政治思想を描き、アメリカを「神の下の国家」と規定する政治文化の一端を探る。時期としてはニクソンとの関係が中心。「祭司」や「預言者」の理念型のこれまでの議論や、「福音伝道者」の分析概念など、キリスト教神学を専門に学んでいない自分には内容を深く理解する上で些か厳しい面があった。冷戦期の反共主義の醸成や、若者たちによるカウンターカルチャーと呼ばれる伝統への挑戦への対峙など、宗教保守と政治の関係はアメリカという国家の根底に埋め込まれている印象。2025/02/16
フクロウ
1
ビリー・グラハム、唯一国葬に付された牧師。その人物像について、特に政治との関係に焦点を当てつつ剔出する博士論文をベースとしたものグラフィー。アイゼンハワー、ジョンソン、ニクソンらとの関わりについて、グラハムの教説につき、①「罪」を強調する神学と、②「福音伝道者」としての職務観(さらにこの職務観は「説得」と「制約」が帰結する)の二つの特徴を踏まえつつ、ビリー・グラハムの教説を正確に読み解き、ところどころ先行研究を修正・刷新していく。ハットフィールドへの着目は面白い。しかしやや繰り返しが多い気はする。2023/02/28