内容説明
“ボッシュ(ドイツ野郎)”の子として蔑まれながら戦後を生き抜いた一人の女性が語るフランス戦後史の真実。
目次
1 ボッシュの子(新しい家族;一台の小型自動車)
2 拭えない過去(結婚、そして出産;もう一度生まれる;書くべきとき)
エピローグ―二〇〇五年四月 ベルリン
著者等紹介
クリュゲール,ジョジアーヌ[クリュゲール,ジョジアーヌ][Kruger,Josiane]
1942年、フランス人女性とドイツ人兵士とのあいだに生まれる。2005年、長年タブーとされてきた自らの出生を明らかにする自伝『Les embryons de guene(戦争の胎児)』を自主出版。2005年に設立された「全国戦争児友好会(ANEG)」の広報担当を務める
小沢君江[オザワキミエ]
1942年生まれ。1961年、AFS留学生として米国に1年滞在。1965年、早稲田大学仏文科卒。1971年、夫ベルナール・ペローと渡仏、1974年にペローと共にイリフネ社創立、ミニコミ誌『いりふね・でふね』創刊。1979年、無料紙『オヴニー』発刊。1981年、文化センター「エスパス・ジャポン」創立。パリ在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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キムチ
52
先日「定められし運命」という映画を見た。 ナチスによる占領下のアルザス地方。戦争がもたらした「時のおとし子」とでもいうエピソードであった。ボッシュとはドイツの蔑称。作品で仏女性と独男性の間に生まれた彼女が辿った歴史を読み易い語りで呟いている。彼女らは60歳を越え「語るべき時が来た」と。ヴィシー政権下の当時、占領下での隠蔽された闇を語っている。重い精神的遺産。世界中、散在しているであろうこういった状況下の人々の言葉に光が当たって行くことは貴重だと思える。2021/03/08
ののまる
19
フランス占拠時にドイツ兵士とフランス人女性の間に生まれた子(ボッシュの子)は20万人いたと言われる。ほとんどは父を知らず、母は戦後裏切り者として髪を刈られ、過去を隠して生き、生まれた子どもは何が何だかわからないまま、周りからボッシュと軽蔑され、自身もナチスドイツの歴史を知り、ナチスドイツへの憎しみが渦巻く戦後の世界のなかで孤立しながら育つ。2016/08/23
つちのこ
10
ずっと以前に観た戦争の記録番組で、髪を丸刈りにされる女性のショッキングな映像があり、その姿がいつまでも記憶の残像になっていた。ボッシュとはドイツ兵のことを言う侮蔑語であり、丸刈りにされた女性は、ナチス占領下のフランスでドイツ兵と恋に落ち、市民から迫害された人たちであった。著者は戦争の落とし子=ボッシュの子として貧困と差別の中で育ったが、やがて同様な運命を背負った仲間たちと全国的な友好活動に入っていく。20万人のボッシュの子は、ナチスが犯した罪の一端であるが、救いはそこにあった純粋な恋物語であると思いたい。2021/07/05
ほっそ
3
また父親を訪ね、ドイツで異母きょうだいにあう展開には、正直おどろいた。やっぱり人間は自分のルーツを知りたいんだ。 NHKのファミリーヒストリーを見ているような気分になりました。2014/07/17
田楽
2
第二次世界大戦後のフランスでドイツ人兵士とフランス人女性の間に生まれた子どもの1人。その出自ゆえに社会や家族との断絶を感じ孤独を抱えている女性の自叙伝。当時のフランスの雰囲気が良くわかりました。恋愛遍歴をしっかり書いてあるのがあけっぴろげだなあと思いました。2018/10/05