出版社内容情報
元花魁と女中が二人暮らし。出るのは鬼か…。
気っ風と純情――江戸の女を描き尽くす著者新境地!
「あんたがお照で、あたしが美晴。何ともお似合いの二人じゃないか。」
お照は義父の卯平に命じられて、亀井町の妾宅で働いている。主人は卯平の奉公先である室町の呉服屋、砧屋喜三郎だ。
喜三郎は手代上がりの婿養子で、妻のお涼に頭が上がらない。そのため、吉原の花魁だった美晴を囲っていることは秘密である。通い番頭の卯平は喜三郎の兄貴分で、自分を引き上げてくれた弟分を守るべく、義理の娘に美晴の世話をさせることにしたのだ。
卯平は「美晴が男を連れ込んだら、すぐに教えろ」とも、お照に命じていた。それぞれが手前勝手な思惑を抱える中、美晴とお照の付き合いは思いがけず深まっていく……。
内容説明
元花魁と女中が二人暮らし。出るのは鬼か…。気っ風と純情―江戸女を描き尽くす!「あんたがお照で、あたしが美晴。何ともお似合いの二人じゃないか。」
著者等紹介
中島要[ナカジマカナメ]
早稲田大学卒業。2008年、「素見」で小説宝石新人賞を受賞。若き町医者を描いた初長編『刀圭』と、受賞作を含む短編集『ひやかし』が好評を集める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しんごろ
186
個人的にはすごく好きな作品。元花魁の美晴と世話役の女中のお照。身請けした旦那を待つ妾宅先で、いろいろ事件が起こりまして、そりゃ大変だ。時には痛快、時には…とにかくいろいろ起きましたね。雑巾すらも絞れないが酸いも甘いも知る美春。この娘のお粥を食べてみたいと思うし家事万能で、世間知らずだが義理には厚いお照。なかなかどうして、実にいいコンビではないか。美春もお照も子供の頃に苦労をしてるからね。相手を慮る優しさがある。今後、ずっと一緒とはいかないと思うけど、二人とも幸せになってほしい。2022/11/19
いつでも母さん
177
若くして身請けされた元花魁・美晴とお目付け役の女中・お照。なんたって美晴が好い。その暮らしはただ、旦那を待つ・・ってだけじゃない。渡る世間の鬼ども(実は身内が一番の鬼だったりする)を向こうに知恵や機転、気っ風に矜持、酸いも甘いも嚙み締めて「天晴れ」なのだ。行き遅れのうぶを地で行くお照の心の声は歯がゆくて、それが美晴と一緒だと凸凹コンビのようにぴったりとハマって来るのが心地良い。最終章ではそう来ましたか!やられた感じ。納得と安心の顛末でとても面白く読了に至った次第。2022/11/05
真理そら
75
『なかとそと』18歳で身請けされた元花魁と、その妾宅で女中兼見張り役をするように義父に命じられた23歳の娘があれこれ小さな問題を解決していく物語かと思って読み進んで行くうちに、びっくりするほどクズな男たちに呆れて読了。好きな人と結婚したはずの跡取り娘の正妻さんもかわいそうだよね。同作者の『ひやかし』も吉原物としてはひねりが利いて面白かったけれど、これもいい。物語としては完結しているけれどシリーズ物として展開させることもできるほど登場人物の個性が立っている。2023/02/21
fuku3
55
2022.11.23読了。お照は料理人の父を9つで亡くし12で母は大店の番頭卯平の後妻となりこれで一家三人暮らせると思ったが義父卯平から味噌醤油問屋に奉公に出された!それから10年今度はウチの店の若旦那勘三郎が囲った妾の女中をやれと卯平に云われ母の事を想い嫌々だが引き受けた!妾の美晴は吉原の花魁18で見受けされ"白粉いらずの白い肌切れ長の目尻は少し上がり筋の通った鼻は品よく右の目尻の黒子が怪しい色気を纏う道行く男達の視線は美晴に釘付け"お照と美晴女二人の物語は美晴の生い立ちが明かされた時驚きの展開が!2022/11/23
ぽてち
40
初読みの作家さん。タイトルは「吉原」を「なか」と読ませ「なかとそと」となる。吉原の花魁だった美晴を世話するお照を主人公とした6話から成る連作長篇だ。最初の2話を読んで同じパターンの繰り返しなのかと思ったが、次第に様子が変わってくる。徐々に明らかになる美晴が遊女となった理由や、郭での暮らし振りに胸が塞がる。お照もまた、実父亡き後の苦労が明かされる。いつの時代も毒親に子は難儀するということか。この2人のキャラクターが対照的でユーモラスだった。重苦しい内容の時代小説なのだが、とても読みやすく重さを感じなかった。2023/01/20