出版社内容情報
斉藤詠一[サイトウエイイチ]
著・文・その他
内容説明
“ifの歴史”―あり得たかもしれない歴史を研究するゼミ「有賀研」に進級した南武大学三年の坂堂雄基。さっそく曾祖父が遺した大量の海軍資料に、准教授の有賀と院生の小春が目をつける。書斎の残る本家を訪ねると高齢の曾祖母が「戦地から持ち帰った大事なもの、取ってあるかしら…」と意味深な発言。謎の島の記述がある戦時中の日記も見つかり、「持ち帰ったもの」の正体を追うことに。やがて思いもかけぬ坂堂家の「秘密」が明らかとなり、さらに事態は人類史や国際社会に繋がる…。
著者等紹介
斉藤詠一[サイトウエイイチ]
1973年東京都生まれ。千葉大学理学部物理学科卒業。自然保護NGO、精密機器メーカー勤務を経て作家に。2018年『到達不能極』で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
119
陰謀ミステリは陰謀の内容と企む者と実行プロセスをどう描くかで決まる。ラドラム流に予想外の大活劇に振り切るか、ル・カレ式にリアリズムを追求するかでなければ、物語が嘘くさくなり白けてしまう。SF要素を取り込んだ乱歩賞の『到達不能極』は奔放なドラマで読者をうならせたが、残念ながら今作は失敗した。戦時中に絡む謎の取引と人類学の関係、文豪キップリングに秘密組織と山盛りの設定を有機的に結びつけようと苦心したあげく、話を矮小化してしまった。この長さなら道具立てを絞り、ストレートなアクションに仕立てた方が成功しただろう。2022/12/09
日の丸タック
38
壮大な歴史ミステリーというのだろうか? 歴史の中に埋もれたミステリー…兄弟の入れ替えであったり、軍艦が沈められた真実であったり。 後から見たら結果のみでプロセスや過程での葛藤は想像するしかない。 歴史の事実は動かないが、プロセスは見る角度や焦点の当て方でかわり、より深く、より魅力的になり得る要素を孕む! その歴史のifを研究することは数多の人間の可能性を見つめ直すことにもなる。2023/01/31
rosetta
32
★★★☆☆大学の仮想歴史研究室に進んだ坂堂雄基。そこではもし歴史上こうだったらどの様に変わっただろうという事を研究している。確かにこれは大学でやる事じゃないだろう(笑) 研究室の主宰の有賀准教授もまるで『動物のお医者さん』の漆原教授を薄めたような変人w 雄基の家には曾祖父、祖父の隠した貴重な学問上の資料が。太平洋戦争中の曾祖父の行動、命を狙われた祖父の研究。ifの研究と資料を探す行程も上手く絡んでいる感じもしないかったし、そもそもそれ程大騒ぎする代物なのかと疑問に思うと物語に乗り切れなかった2022/10/15
ひさか
28
小説NON2022年7,8月号掲載の一千億のif帰還を第一話とし、第二話〜四話までを書き下ろして、2022年9月祥伝社から刊行。仮想歴史学の准教授が登場し、曾祖父が戦地から持ち帰った骨に始まる展開から、あり得たかもしれない歴史を探求するストーリー。戦争時代の謎は面白いが、秘密結社なんかが登場する辺りで、ありがちで退屈な展開になってしまい、あまり楽しめなかった。残念。2022/12/10
臓物ちゃん
20
南極にナチスの基地作ったり幕末とクメール・ルージュを繋げたりと歴史をグリグリ動かす技術に定評のある著者さんがそのグリグリ能力を最大限に活かして戦艦畝傍とインパール作戦とCOVID-19を繋げるという無茶な三題噺に挑んだ連作集。タイトルからして歴史改変SFかと思ったらさにあらず、歴史の可能性を探る大学ゼミを主役に添えて歴史を深堀りしていくというのがミソ。面白い、というより整った!って感じが楽しめる一冊。2022/09/22
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