内容説明
寿永二年(一一八三)、木曾義仲により、京都六波羅を追われ西へと落ちた平家一門。同年冬、清盛の弟・頼盛の姿は鎌倉にあった。正妻の子として、一時は清盛に代わる平家の棟梁と期待された頼盛は、なぜ一門を離れたのか。偉大な兄をひとえに支え続け、決して野心を表にすることのなかった頼盛と、兄があえて殺さず流罪とした宿敵・源頼朝を結ぶ因縁とは?後白河院、白拍子、仮面の童子蜻蛉…異能のものが、平氏の世の終わりに演じた役割は?歴史の急変期における英雄の生き様と、たえまない無常の流れを記す幻想の歴史小説。不世出の成功者を新たな視線から描く。
著者等紹介
若木未生[ワカギミオ]
1968年生まれ。早稲田大学文学部中退。89年、大学在学中にコバルト・ノベル大賞佳作入選。同年、「ハイスクール・オーラバスター」シリーズの第一作『天使はうまく踊れない』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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りー
24
んーーー。さっぱりしすぎていて、拍子抜けした、というのが正直なところ。頼盛の立場から見た平氏を書くなら、家盛亡き後の池禅尼と清盛の隠れた確執や清盛の鬱屈、芸能と後白河院の関わりは、もっとドロドロ煮詰まったものになったのではなかろうか。表面だけ撫でて終わった感じがして。勿体ないなぁ。2023/01/20
鐵太郎
17
平頼盛(1133-1186 清盛の異母弟)という、歴史の中でちょっと目だたない人物を主人公に立てて平家の時代を新しい角度から見た歴史小説。常に一歩下がって思慮深く行動することで世に軽んじられたとされる人物を、淡々と描いています。彼の名が大きく扱われないのは、なんと言っても清盛の死後、都を追われて西下する平家主力に同行せず、自分の一族だけで源頼朝に帰順したからなのですが、その経緯、思いについての解釈が斬新かな。平家物語の冒頭に出てきた白拍子、祇王の描写がちょっと素敵。この作家の本、探してみようか。2021/04/18
*+:。.もも.。:+*
16
「ゆめのつるぎ」という著書の仕切りなおしのような作品らしい。オーラバシリーズで見せるような文章表現がこの時代のものにマッチしている。人物の相関図をつけてくれたらもう少し分かりやすかったかなと思う。2020/12/02
豆電球
14
「戦をせんとや生まれけむ」が期待外れだっただけに、こちらも軽く読む程度…と思っていたら、思いの外面白かったです。祇王やあきつが上手く絡んでストーリーに深みを持たせ、著者らしさがしっかり作品に表れているなと思いました。真昼の月という感覚にラノベっぽさが残っている気はしましたが、オーラバなど若い頃お世話になったからこそ気になっただけかも。全然覚えてないんだけども。清盛と頼盛の新解釈、良かったです。こういう「平家物語エピソード0」も良いものですね。2022/05/14
多津子
11
平清盛の弟、頼盛が主人公。清盛を見上げ付き従っていた弟は、清盛亡き後は源氏に身を寄せる。淡々としたキャラクターが良かった。この時代はあまり詳しくないので知識に邪魔されることなく物語を楽しめた。2021/07/10