内容説明
「おいしいね」を分け合えるそんな人に、出会ってしまった。古い京町家で暮らす夕香と同居することになった正和。理由は“食の趣味”が合うから。ただそれだけ。なのに、恋人の華には言えなくて…。三角関係未満の揺れ動く女、男、女の物語。
著者等紹介
千早茜[チハヤアカネ]
1979年、北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2008年、第21回小説すばる新人賞を受賞した『魚神』でデビュー。翌年、同作にて第37回泉鏡花文学賞受賞。13年『あとかた』で第20回島清恋愛文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
481
千早 茜は、新作中心に読んでいる作家です。お料理小説連作短編集の体裁ですが、一筋縄ではいきません。今時の三角関係ダブルの恋愛模様、不思議な小説ですが、楽しめました。タイトルの料理・食べ物の内、ベトナム料理のバインセオ以外は、全部食べたことがありました。料理上手の女性と暮らしたことがないですが、やっぱり幸せなんでしょうね。2019/12/16
美紀ちゃん
240
高村夕香さんと伊東正和くん中野華さんの三角関係。 伊東くんは悩む。 俺にとっての家はどっち? 心も身体も華に。 けど生活は高村さんの町家に。 穏やかで居心地の好い暮らし。感情は生活に宿るのか?心に宿るのか?混乱する。 華は他の女の子とは違う普通じゃない。まぁ、悩むよね。 出てくる料理の描写が美味しそう! 皮から作った水餃子!しかも具はパクチーと羊。絶対に美味しいよね。もー土鍋で炊いた白米で作った塩おにぎりから最後までずっと飯テロ。 とうもろこしご飯とか、最高に美味しそう! 手巻き寿司最高! 2020/11/11
tenori
182
意地悪な本。装丁はパフェなどあしらって可愛らしい。四季を織り交ぜた京都の描写もよい。なにより食に対する表現。文字だけで素材感や調理の音、匂い、味までが手に取れるように伝わってくるし、食べることの喜びを感じられる。翻って登場する三人の男女のこずるさよ。不器用と言えば聞こえが良いけれど、自分の愚かさを誰かにぶつけて正当化しようとしている。その微妙な関係性が「さんかく」なわけで、平仮名としたあたりは読めば納得。人間関係のアンバランスと、食に対する緻密な表現がなんとも独特な世界観を作りだしている。意地悪である。2020/08/27
❁かな❁
181
食べるの大好きでお料理も得意な千早さんらしい作品。京都を舞台に緩やかな男女の物語。京町家で暮らすアラフォー高村さんと同居することになった伊東くん。そして研究一筋の恋人の華。古い町家での丁寧な暮らしが素敵で鼠が出るのは無理だけど少し憧れてしまう。出てくるお料理が全てとても美味しそう。食の趣味が合い「おいしいね」を分け合えるのは幸せ。映画『月とキャベツ』だろうと思われる会話もでてきたり資生堂パーラー、イノダコーヒーなど実在するお店が出てくるのも嬉しい。淡い三角関係。違うラストを望んでしまったけど好みの作品。2020/06/05
machi☺︎︎゛
168
華ちゃんという恋人がいながらも、年上の元バイト仲間の高村さんと同居を始める伊東くん。人によって解釈の仕方は違うと思うけど、私は伊東くんが不器用に見せかけて実は自分にとって都合のいいように華ちゃんと高村さんを利用しているみたいで嫌なやつに映った。でも高村さんは結局芯の通った大人な女性だった。ひとときの感情に流されずちゃんと冷静に考えられる人って憧れる。伊東くんによって逆立った感情も出てくる美味しそうな料理の味を想像してたら落ち着いた。2020/10/26