出版社内容情報
乾 緑郎[イヌイ ロクロウ]
内容説明
気鋭の劇作家内藤岳は、知己を得た世界的劇作家ヘルムート・ギジに師事するため、ドイツに渡った。ギジは冷戦時代、旧東ドイツで体制を批判するシェイクスピアの翻案作品で名を馳せていた。その彼が、三十年ぶりに『ロミオとジュリエット』の翻案『R/J』を執筆中というニュースは世界を驚かせ、原作と翻案が同時上演されることに。だが、新作の完成を待つ中で進む原作舞台の稽古中、女優が重傷を負う事故が発生。直後、ギジが新作原稿とともに姿を消した。岳はルームメイトで演劇研究家の桐山準と協力、ギジの足跡を辿り、やがて彼の経歴から消された闇を知ることに…。
著者等紹介
乾緑郎[イヌイロクロウ]
1971年東京都生まれ。鍼灸師の傍ら、小劇場を中心に舞台俳優、演出家、劇作家として活動。その後、2010年8月、『忍び外伝』で第二回朝日時代小説大賞を受賞、同年10月『完全なる首長竜の日』で第9回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し小説家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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pukupuku
67
ベルリンの壁崩壊、諜報員、翻弄される劇作家の運命。少なからず舞台には興味をもっているので、どんなふうに展開していくのかなと気になって一気に読み進めたけど…退屈な舞台は苦痛でしかないように、興味のない人にはもしかしたらちょっと退屈かも。2017/09/30
だんじろー
56
序盤から、これはスケールの大きなサスペンスだぞ、と気合を入れて読み進めたのだけれど・・・。最後の最後になって、勢いよくいきなり梯子を外された感じ。このやり場のない高揚感はいったいどうしたらいいのだろう・・・。そりゃあ、帯をきちんと読まなかった自分も迂闊だったけれど、途中まではそんな流れになるなんて予想だにしなかったほど。なにしろ首謀者の行動が全く煮え切らないし、大げさな振舞いの割に結局何をしたかったのか、さっぱり分からなかったよ。乾さんの長編、楽しみにしてたのになあ。残念。2017/09/09
kosmos
22
日本で劇団の仲間と上手くいかなくなった主人公が、ドイツに渡り劇作家の元で1年間学ぶことに。主人公の性格のせいか、登場人物の印象が読み進めるうちにどんどん変わっていくのが面白い。話は思っていた以上に愛憎入り乱れていて、この表紙の色合いがぴったりだと思った。個人的には東ドイツの劇作家、シュタージというキーワードで「善き人のためのソナタ」を思い出したので近々見たい。あの映画は好きだ。2017/09/03
igaiga
19
最後が「あれ??」って感じではあったけれどかなり好み。面白いなぁー。でもこの主人公・・・基本的にすべてにおいてやる気があまりないよね。主体性がないというか・・・序盤はもう少しハッキリとしたタイプかなと思っていましたが。2017/08/12
くみこ
18
演劇青年の岳が、ドイツ人の有名劇作家ギジと偶然出会って始まる物語。三十年ぶりのギジの新作発表と同時に起こり始めた事故や失踪の原因は、東ドイツ時代にありそうです。諜報員、監視を逃れて創作された戯曲の秘密、抑圧された恋愛感情…、壮大な物語を期待しましたが、着地点が痴話喧嘩になってしまったようで残念です。曰く付きの戯曲が、演劇人として自信を失くした岳の再生にどう絡むのかも興味がありましたが、ひたすら陰気な岳に魅力は無いし。演劇と東ドイツの組み合わせと、岳以外の登場人物は良かったです。2023/03/07