出版社内容情報
垣谷美雨[カキヤ ミウ]
内容説明
「結婚を考えている彼女ができたから、部屋から出て行ってくれ」派遣ギリに遭った日、32歳の水沢久美子は同棲相手から突然別れを切り出された。5年前、プロポーズを断ったのは自分だったのに。仕事と彼氏と家を失った久美子は、偶然目にした「農業女子特集」というTV番組に釘付けになった。自力で耕した畑から採れた作物で生きる同世代の輝く笑顔。―農業だ!さっそく田舎に引っ越し農業大学校に入学、野菜作りのノウハウを習得した久美子は、希望に満ちた農村ライフが待っていると信じていたのだが…。
著者等紹介
垣谷美雨[カキヤミウ]
1959年、兵庫県生まれ。明治大学文学部卒。2005年、「竜巻ガール」で小説推理新人賞を受賞し小説家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
風眠
454
田舎の、特にお年寄りは「どこの馬の骨かわからない」と、よそから来た人を警戒する。これ、農家あるあるかもしれないって、読みながら祖母のことを思い出した。亡くなった祖母はよく「ご先祖様から受け継いだ土地を守らなければ」と言っていた。この言葉が、貸したがらないことへの答えかもしれないと思う。大切に土地を耕す、その土地で生きてきた人の話を聞く、言いつけを守る、その土地の人と打ち解け信頼関係を築く、出会った縁と受けた恩に感謝する。新しい道を拓くために大切なこと。新規就農事情や農家婚活。綺麗事だけじゃない、農ライフ。2017/03/05
Yunemo
450
SFぽい死亡法案・if、住宅ローン、老後、震災、子育て等々、相当に幅広い素材で表現してきた著者。今度は農業です。農村ライフの最低限の現実を表現。切羽詰まって新しい自分に出会うための選択が、そうそううまくいくはずはなく。何だか今までと比して、ちょっと上面だけの薄さを感じて。『幸せの条件』も同様農業分野ですが、農業に対する厳しい条件、具体的な作業と苦しさを存分に記しています。そうは言っても本作、女一人、自給自足で生きていく覚悟、取り巻く人達の厳しさと優しさ、苦しいけど選択は間違いじゃなかった。読後感いいです。2016/10/10
ウッディ
440
派遣切り、同棲相手からの別れで、仕事も家も失った久美子は、「農業女子」というテレビの特集番組を目にし、自分にもできるのではないかと動き出す。薔薇色に見えた農業への道は、茨の道だったが‥。楽しい農ライフという予想を裏切り、辛いことばかり。行政の新規就農者への援助はあっても、農地が借りられない、手塩にかけて育てた作物が安い等々。けれど、真面目に前向きに取り組む主人公に手を差し伸べる人が増えて‥。リアルな農ライフと爽やかな結末、やはり、夢に向かって頑張っている人は、認められて欲しい。とっても面白かったです。 2018/01/20
zero1
431
【人生は挑戦の連続】農業で救われるか。それとも救うか。32歳の久美子は派遣切りの上、同居の男から別の女性との結婚を切り出される。垣谷作品らしいピンチだが久美子はTVで知った農業への道を目指す。農業大学校で学ぶものの、誰も土地を貸してくれない。そこに救世主現る!問題点だらけな日本の農業だけでなく婚活パーティーの本音や介護の問題も描く。ご都合主義の部分はあるが再読でも楽しめた。どの道も苦労はあるが、上司のいない世界を望む人は読んだら参考になるかも。名文句多し(後述)。2020/01/27
yoshida
372
これは変化の早い現代で、どのように自分のアイディアで「生きて」いくかの物語である。単純に若い女性が農業を始めて成功する話しではない。最近の世の中に溢れる危うさが盛り込まれ、そこからどう判断し生きるか考えさせらる。大学から新卒で就職しても激務で身体を壊す事もある、会社が倒産する事もある。実家や両親が健在というセーフティネットがあれば良い。自分一人の力で生きるならどうか。正社員の働き口がなく非正規雇用で糊口をしのぐ場合もある。それは何歳まで可能か。自分の力で人生を切り拓くことを、改めて気が付かせてくれた名著。2017/03/19