内容説明
札幌で暮らす小学六年生の瀬川大介には、自らの鬱屈を晴らす、ささやかな楽しみがあった。それは隣家に住む、指が二本ない謎の老人佐藤北海が見守る貧弱な樹がつける花芽を削り取ること。開花を待つ北海の喜びを奪うことで、不満を溜めた老人が“暴発”することを願っていた。だが、夏休みに入ったある日、大介の油断を衝いてその樹が白い花を咲かせる。それを見た北海は突如ボストンバッグを抱えて旅に出発、両親と喧嘩して家出をするつもりだった大介は、急遽彼を追うことに…。一人の少年の好奇心と冒険心が生んだ心に沁みわたる感動の物語。
著者等紹介
乾ルカ[イヌイルカ]
1970年北海道生まれ。藤女子短期大学卒業。2006年「夏光」で第86回オール讀物新人賞を受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
takaC
164
図書室の書架でたまたま目にして借りて読んだが、思いがけず良い話だった。時代設定は今から二、三十年前といったところみたいなので、その時代の経験があるとより味わえるかも。2016/08/21
初美マリン
134
その夏家出した少年は、出会った人々からこれから生きていくすべてを学んだ。本当の強さ、戦争、自分の目で正しいものを確かめる。大きく大きく成長した。こんな旅はありえないだろうけど、羨ましい。2021/06/08
ゆみねこ
128
偏屈な隣家の老人の庭の貧弱な1本の木、その花芽をそぎ取り彼の行動を監視する小学六年生の瀬川大介。夏休みに入ったある日、大介は老人・佐藤北海のあとを追い、家を抜け出した。北海老人の抱えたもの、大介の鬱屈。二人の旅の終わりはとても感動的でした。我儘で幼い大介が旅の途中で出会った人々、佐藤北海の来し方を知り、大きく成長してゆく。お薦め本です!2016/05/28
ひめか*
108
いじめられたり両親からうるさく怒られたり、心にモヤモヤを抱えた少年・大介の一夏の冒険。周りから疎まれている、隣に住むお爺さん・北海の荷台に乗り込み家出する。目的地へと向かう道中で出会う大人たちから、いろんな話を聞いたり見たりして、大介にとっては一皮むけたような経験になったと思う。北海は初めは怖い人かと思っていたけど、なんだかんだ良い人で最後は好きになった。戦争によって友人に裏切られた過去を持っており、戦争といっても人によって境遇は様々だなと思い知った。大人になったな成長したなと感じられるラストが心地いい。2021/09/09
なゆ
104
しみじみ。あの花が咲いたら、誰に会いに行くのか。親への反発で、こっそりと隣の偏屈な爺さん(北海さん)の旅についていく小6の大介。夏休みの冒険のようなロードノベルとも言えるが、戦争の傷あとから始まる話でもある。ポケットのナイフをいつも触っていないと落ち着かず、はじめのうちはどこかイヤな感じの大介だったが、旅でいろんな人と出会いいろんな価値観を知ることで変わっていく様子がとてもいい。北海さんが語る戦争の話も、それまでが言葉少ななだけに心に響く。〝偽りの赦しではなく、正直な拒絶でよかった〟という言葉が心に残る。2016/07/18
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