内容説明
鬼隼人、許すまじ―財政難に喘ぐ豊後・羽根藩には、怨嗟の声が渦巻いていた。十五年前に仕官、やがて御勝手方総元締に任じられた多聞隼人が、藩主・三浦兼清を名君と成すために、領民家中に激烈な痛みを伴う改革を断行したためであった。そんな中、誰も成し得なかった黒菱沼の干拓の命が下る。一揆さえ招きかねない難題であった。それにも拘わらず、隼人は家老に就くことを条件に受諾。工事の名手で“人食い”と呼ばれる大庄屋・佐野七右衛門、獄中にあった“大蛇”と忌み嫌われる学者・千々岩臥雲を召集、難工事に着手する。だが、城中では、反隼人派の策謀が蠢き始めていた…。『蜩ノ記』『潮鳴り』に続く羽根藩シリーズ、待望の第三弾!
著者等紹介
葉室麟[ハムロリン]
1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年、『乾山晩愁』で第29回歴史文学賞を受賞し、作家デビュー。07年、『銀漢の賦』で第14回松本清張賞を、12年には『蜩ノ記』で第146回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
それいゆ
91
「蜩ノ記」「潮鳴り」に続く羽根藩シリーズ第三弾だけあって、葉室作品の中では上出来の部類だと思います。ラストが私の願望どおりにならない展開ですが、これもまた微妙な余韻が残り 、いいのかもしれません。楓とおりうは華となりうる女性で、二人とも私の好みです。いつも同じことを思うのですが、葉室さんには安部竜太郎や冲方丁の作品のような大作を期待しています。時間をかけて執筆した骨太の超大作を読んでみたいものです。2015/04/04
starbro
74
葉室麟は多作なので、ほぼ2か月に1冊新作を読んでいます。葉室麟の作品は単なる時代小説ではなく、ハードボイルド時代小説だと思います。男性読者が多いことが想定されますが、女性にも読んでもらいたいと考えています。今回の主人公、多聞隼人にも惚れること必至です。2015/04/10
ゆみねこ
69
鬼と呼ばれながらも、藩政に命を懸けた多聞隼人。主君を名君と呼ばせたいという目的に違和感を覚え、こんなバカ殿の為にって思うと終わり方にモヤモヤも。大庄屋・佐野七右衛門や臥雲、玄鬼坊など、脇役は魅力的でした。2016/02/18
さく
52
隼人は藩主の本質は見抜いていただろう。ただ、この藩を立て直し、民を守り幸せにしたいから、鬼になった。莞爾と笑い、大願成就とつぶやいた場面に、その後の藩主、家老の結末を理解した。娘たちは許してくれるだろうか、父の想い生き様を。お花がきれいと言った娘をただ、見つめるしか出来なかった、あの時。表紙の黒菱沼と隼人の厳しい背中に想いが溢れます。2021/03/26
keiトモニ
49
それにしても憎きは播磨屋弥右衛門なり。働かず金をせしめる博徒が何より嫌いで、干拓事業に汗する“人食い七右衛門”を見習え!没落の安良城野大庄屋小野伝兵衛“人に褒められよりも尽くすことを選んだ者には何も回って来ぬ。望んでおらぬものは手に入らぬ…”☚左様じゃ“理不尽ではございませんか…理不尽なのがこの世の中だ”☜北海道上空通過のミサイル発射国がそれじゃ。民は苛斂誅求に苦しむのう。羽根藩アホ重役に指導を仰ぎ一揆を起すのじゃ。すれば大願成就。人食い七右衛門も言う…見ているだけで虫唾が走る若き男女と主婦の亡国遊戯…。2017/08/29