内容説明
角館の佐竹北家に仕える小田野直武(武助)は、安永二(一七七三)年七月、本草学者にして山師・平賀源内に画才を認められる。その時見せられた阿蘭陀絵の西洋画法に衝撃を受けた武助は、源内の誘いで江戸での蘭画修業を開始。浮世絵師・吉次郎(鈴木春重)らから刺激を受けながら画道に専念、やがて杉田玄白らが翻訳を目指す『解体新書』の附図描きの仕事を得る。それを機に、老中・田沼意次の知遇を得るようになっていくが…。後代の浮世絵にも多大な影響を与えた秋田蘭画の中心的絵師にして、平賀源内に愛された小田野直武。夭逝を遂げた謎の絵師の生涯を活写した傑作歴史小説。
著者等紹介
城野隆[ジョウノタカシ]
1948年、徳島県生まれ。大阪教育大学卒。教員生活を経て、99年「月冴え」で小説NON(祥伝社発行)創刊150号記念短編時代小説賞を受賞し、文壇デビュー。2000年に『妖怪の図』で第24回歴史文学賞を、05年には『一枚摺屋』で第12回松本清張賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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onasu
13
図書館で、目当ての本の隣りで発掘。図らずもいい出会いになりました。 平賀源内とは、田沼意次とも絡んだ多才の人で、それに師事したのが、佐竹藩陪臣の小田野直武、通称武助。杉田玄白らの解体新書の附図の絵師を探していた源内の目に止まり、江戸に。習作を重ね、蘭絵を習得。解体新書の奥付に名を付すまでに。だが、その影には田沼と藩政、その間を取り持つ源内と政敵という、勢力関係があり、やがては、その渦に…。 史実に基づくフィクションですが、立志伝は読んでいて、ワクワクします。また、その時代の知識習得にもなりました。2012/07/26
キムチ
11
秋田蘭画の天才、「小野田直武」 馴染みが少ない佐竹北藩できらりと光った彼は傑物、源内に見いだされ、江戸に出る。女を抱き、男に抱かれ、杉田玄白、前野良沢らとも交流し・・という濃密な時間を殆ど推測で書いている。 事実を知らないだけに「フムフム」と云う感じで読む。江戸末期の政争(田沼一派との確執」も織り込み、直武と蘭学の雰囲気を知るにはいいが、今一つ華がなかった。 城野氏2作目、筆致が地味な感がする。作品が少ないのでゆっくり楽しんで行こう。2013/06/25
野の花
9
平賀源内はこう言う人だったのですね。ちょっと意外!解体新書の成り立ちやエレキテルについても分かって歴史の勉強になりました。武助さんにはもっと絵を描いて欲しかった。最後が残念です。2018/08/27
あかんべ
6
源内さんがあんな最後を遂げるのは予想できたがまさか武助さんがあんな最後を遂げるなんて、ちょっとショックです。2012/09/30
ゆずこまめ
6
解体新書の図を担当した、小田野直武が主人公。油絵具も鉛筆もない時代に遠近法を追求しようとするなんて、大変だったんだろうなぁ。しかも図鑑とかのお手本があるだけで、詳しいことは誰からも教えてもらえない。手探りでがんばった武助(直武)が好印象。最初はちょっと気持ち悪かった平賀源内との師弟愛も泣けます。2011/03/11