内容説明
「理念」によって、言葉によって作り出されたアメリカが、「神話」を追い求めたゆえの可能性と限界―NHK BSプレミアムで放送中の人気番組待望の書籍化。未公開部分も収録。
目次
第1章 1970年代―幻想の70s(70年代とは何だったのか;若者たちの反抗と保守派の反動 ほか)
第2章 1980年代―葛藤の80s(レーガンの「1984」;「男らしさ」と伝統を取り戻せ ほか)
第3章 1990年代―喪失の90s(「ポスト冷戦」の世界;ジェネレーションXたちの持つ不満と不安 ほか)
第4章 アメリカの憂鬱と「日本の小さな希望」―戦後アメリカと日本の欲望の系譜 幻想 葛藤 そして喪失(70年代前夜の「闘争の季節」 日米の陰影;アメリカ「空白」の70年代はサブカルチャー的には「豊穣」の時代 ほか)
著者等紹介
丸山俊一[マルヤマシュンイチ]
NHKエンタープライズコンテンツ開発部エグゼクティブ・プロデューサー。1962年長野県松本市生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。異色の教養ドキュメントをプロデュースし続ける。著書多数。東京藝術大学客員教授を兼務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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原玉幸子
22
私自身が「ジェネレーションX」故にか、70~90年代の映画評と米国文化の変遷は、想定通り過ぎて寧ろ退屈でとても推奨出来ないと最初は思っていました。が、例えば「米国には、日本で言う精神に当て嵌まるドイツ哲学のGeist(ガイスト)という概念がない」=米国は物質主義ということか!が、改めて著者の総括で指摘されて、成程そうかと腹落ちする不思議な構成でした。米国文学や映画が、人間の心身の境界線のあやふやさをテーマにしている気がするのは私だけでしょうか。本書もこの感覚も、う、うまく言えない。(◎2022年・冬)2022/11/05
モルテン
8
同番組のシーズン1アメリカ編の解説者二人の解説を抜粋した本。番組を見てて、どうして「アメリカン・ビューティー」を取り上げないのか疑問だったのが、本書では番組未公開の箇所として「アメリカン・ビューティー」が解説されていて、そして何故番組で取り上げられなかったかが分かって腑に落ちた。この番組を見たり本書を読んだりして、歴史の浅い国でありながら強大な力を持つのは大変だなとしみじみした。2023/07/04
茶幸才斎
3
米国の歴史家と作家の2人が70〜90年代を飾ったアメリカ映画を取り上げ、作中表現から「この時代はこんなだった」と迷走する自国の文化的・社会的様相を読み解くのを紹介した本。物語は取捨選択と編集でどのようにも成型できるので、時代論考の書としては魅力に欠ける。70年代以降の社会の潮流は、稲作の普及や武士の台頭と異なり、いまだ歴史的評価を下せるほど消化も結晶化もされていない。変化が激しく先の見えない不安から、直近の過去を規定しその延長線上に現在と未来を捉えたい願望は分かるが、多分、いつの時代も未来は手探りですよ。2022/06/26
yurari
2
70~90'sのアメリカの歴史的・文化的側面を紹介しつつ、その時代を代表する映画(時々小説など)を紹介。景気が低迷した70'sは、カルチャー面では現代アメリカの社会構造を規定している諸要素が生まれた。SF映画では、ユートピアの世界としてだけでなく、ディストピアとして描かれる可能性が出てきた時代。80'sは表面的には華やかで輝きに満ちている。資本主義と物質主義が台頭するが、核兵器凍結運動やエイズアクティビズム等、別の潮流もみられる。大衆文化ではラップやポスト・パンクの流行、2022/08/28
terry
1
アメリカという世界最強の国の20世紀後半、70年代から90年代の動きを映画というサブカルチャーを軸に分析しようという内容。NHKの番組を見て結構面白かったので読んでみた。うーん、NHKの映像とこの本では全く違った。本の外観はペーパーバックで紙も安価そうな感じ、さらりと読めると思いきや中々にハード。本でじっくり読んでみると、その時代と映画とを結びつけるのに何か無理やり感があるし難解な語彙が多く正直僕の頭ではついていけなかった。残念。2024/02/20