内容説明
「幻」から八年。源氏亡きあと、出生の秘密に悩む薫。美しくドラマティックな傑作「宇治十帖」の幕が開く。
目次
匂兵部卿
紅梅
竹河
橋姫
椎本
総角
著者等紹介
林望[ハヤシノゾム]
1949年東京生まれ。作家・国文学者。慶應義塾大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学客員教授、東京藝術大学助教授等を歴任。専門は日本書誌学、国文学。『イギリスはおいしい』(文春文庫)で日本エッセイスト・クラブ賞、『ケンブリッジ大学所蔵和漢古書総合目録』(ケンブリッジ大学出版)で国際交流奨励賞、『林望のイギリス観察辞典』(平凡社)で講談社エッセイ賞を受賞。『源氏物語』に関する著作、講演も多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
colocolokenta
23
匂宮三帖はテレビドラマのつなぎのようだったが、宇治十帖に入ってからはあっという間に引き込まれた。宇治の八の宮の悲しい境涯とその遺言から逃れることのできない大君。その大君と薫のプラトニックラブ。家柄に縛られる匂宮。京都と宇治は20キロぐらい、道などあまり整備されていなかっただろうから、行き来はさぞ大変だったに違いない。それでも頑張れたのは20代の若者の元気さあってこその物語といえる。なかなか楽しそうなパーティーを時々やっている。別荘地での上流階級の遊びといったところのようで、興味深い。2015/10/17
tom
19
源氏物語は、7巻まで読んだ。でも、女漁りの連続技にあきれ果て、源氏死亡を機に読むのを止めた。ところが、最近友人から、源氏物語は源氏が死んでからが面白い、ほとんど現代文学のようだと聞く。そうですか、それなら読んでみようかと。そして読んでみた。確かに違う。源氏の息子薫君、落ちぶれ貴族と仲良くなり、二人の娘の将来を託される。薫君は長女に惹かれる。美しいのは次女のほうだけど、次女は匂君に譲る。でも長女はいろいろあって死んでしまう。薫君は臨終の長女について縷々語る。その描写、ちょっとしたもの。確かに現代的、面白い。2024/03/17
ひさしぶり
17
ん? 光源氏は? 唐突に物語は進んで宇治十帖に。薫と匂宮の全く性格の違う2人。冷泉院の庇護のもとの薫、八の宮が己が隠れた後の2人の姫の後ろ盾を頼んだところから悲恋の展開。堅物の薫が語る宇治の姫にすっかり魅了されてしまう匂宮。宮家に仕える女房たちの口の軽さよ、薫の出生の秘密は語るわ(本人は口は固いというが)匂宮の京でのありさまを噂するわ。2020/01/23
loanmeadime
9
世代交代があって、えっ、これって誰だっけみたいな事があって前の記事を読みなどしながら読み進めました。一言で言えば意識過剰ですね。光と頭中将の頃までは、そうでもなかったのに、必要以上にあれこれ考える薫と大君・・・ともかく、やることやっておしまいなさい、と弁の君よろしく考えてしまいました。匂宮三帖と宇治十帖に突入です。2020/07/31
shimashimaon
7
予想はしていましたが、まさか「源氏は既に亡く」で始まるとは思いませんでした。併せて読んでいる高木和子『源氏物語を読む』で本居宣長の解釈が紹介されていますが、何とも切ないです。ここはぜひ深掘りしたいです。次代の恋物語はどうかと言えば、実家の後ろ盾のない女性が如何に高貴とはいえ零落を余儀なくされる様は、何ともいえないです。その事情を斟酌する境遇にない私には、薫になり代わって「もう結構です」と言ってしまいたい気分になりました。仏教が貴族のものであった様子も、他の巻に比べてより色濃く描かれているように思いました。2022/12/06
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