出版社内容情報
この小説に書かれたことは必ず実現しなければならない。
たとえ殺人であっても――。
新感覚ミステリーの傑作、ここに誕生!
己の破滅的な生き様を私小説として発表し続けた文壇の重鎮、須賀庸一。彼の死後、絶縁状態にあった娘のもとに、庸一から原稿の入った郵便物が届く。遺稿に書かれていた驚くべき秘密――それは、すべての作品を書いたのは約60年前に自殺したはずの弟だということ。さらには原稿に書かれた内容を庸一が実行に移し、後から私小説に仕立て上げていたという「事実」だった……。
内容説明
己の破滅的な生き様を私小説として発表し続けた文壇の重鎮、須賀庸一。彼の死後、絶縁状態にあった娘のもとに、庸一から原稿の入った郵便物が届く。遺稿に書かれていた驚くべき秘密―それは、すべての作品を書いたのは約六十年前に自殺したはずの弟だということ。さらには原稿に書かれた内容を庸一が実行に移し、後から私小説に仕立て上げていたという事実だった…。
著者等紹介
岩井圭也[イワイケイヤ]
1987年生まれ。大阪府出身。北海道大学大学院農学院修了。2018年『永遠についての証明』で第九回野性時代フロンティア文学賞を受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yukaring
71
虚構と現実の境界線が侵食されていく不気味さと不安感。作家や私小説の在り方について考えさせられる衝撃の問題作。自分の破天荒で暴力的な生き方をウリにした私小説で文壇の重鎮に登り詰めた須賀庸一。彼の死後に明かされた驚くべき秘密、それは庸一の私小説を書いていたのは彼の弟で60年前に自殺したはずの堅次だという事。そして実は庸一は堅次の書いた私小説を後づけで実行していたという事実だった・・。兄と弟の歪んだ依存関係、小説に侵食されていく生き様、虚構の前に脆くも崩れ落ちる現実、とても読みごたえのあるダークミステリだった。2023/07/01
のんちゃん
61
長い間絶縁していた父須賀庸一からその死後、娘明日美の元に印刷物が届く。庸一は最後の文士という異名をもつ破天荒な私小説作家だった。その印刷物は小説であり、庸一の今迄の作品は、全て15歳で自死した弟堅次が、実は存命で堅次が書いたものであり、庸一はその小説通りに生きてきたという内容だった。ミステリの範疇の作品なので、ネタバレになる為これ以上記さないが、どんでん返しのまた返しという作品。入れ子状態の様なこの作品、よく練り上げたと作者に感心する。妻の自死の場面にちょっと違和感があった。それが明日美の問いの答かな。2023/11/06
オーウェン
60
私小説作家の須賀庸一が死んだ。 生前から仲違いしていた娘のもとに届いた文集。 それは須賀庸一と死んだとされていた弟との隠されていた秘密。 弟の書いた小説を兄が自分の様に演じるという、私小説に見せかけたゴーストライターの一種である。 語りが巧いのか。スラスラ読めていき全く苦にしない読み易さがある。 そして忘れていたかのように終盤あるトリックが。 似たような作品があったが、兄弟の共同と確執に注意がいっていたので気付かなかった。 ラストも困惑させるような余韻を突き付けてくる。2024/12/29
akiᵕ̈
47
なんて斬新な切り口の小説!これぞ小説の醍醐味だけど、小説ありきの人生⁉︎描かれた通りに生きていくなんて、恐ろしくもあり裏を返せば何者にもなれてしまうということ。実際、須賀庸一は〈管洋一〉として、弟の堅次が作り上げた虚構の世界で本来の性格とは違う人格に成り上がり、文士となり生き続けた。そんな庸一にもあったほんの少しの良心と愛情は、庸一同様見事なまでに虚構に染まった妻・恵以子の一言でぶちのめされた。生きた証を望んだ、虚構の中に生きてきた人たちは果たして満足できたのだろうか。最後まで見事なまでの虚構に弄ばれた。2023/03/14
桜
45
結局何なん〜〜〜っ?! 弟堅次の小説パートと、それをなぞって生きる庸一のパートが折り重なって手が止まらない。 「現実って危ういよね」どころではなくぐらぐらきた一冊でした。2025/02/26