出版社内容情報
いつも一緒に泣いたり笑ったり。それが夫婦っていうもんだ。
懸命に真っ当に生きる家族が明日の夢を紡ぐ、滋味溢れる時代小説。
「沢庵は頭から尻尾まででどこが一番うまいと思う」
茂平は大工の元棟梁。いつの頃からか深川では〝ほら吹き茂平?と渾名されるようになった。別に人を騙すつもりはない。悲しいことも苦しいことも、ほらに紛らせば落ち込まないことを、懸命に働くうちに身につけたのだ。今日も一向に嫁ぐ気のない我儘娘と相談に来た母親に語り出すと……。笑いと涙の人情小説集。
内容説明
「沢庵は頭から尻尾まででどこが一番うまいと思う」茂平は大工の元棟梁。いつの頃からか深川では“ほら吹き茂平”と渾名されるようになった。別に人を騙すつもりはない。悲しいことも苦しいことも、ほらに紛らせば落ち込まないことを、懸命に働くうちに身につけたのだ。今日も一向に嫁ぐ気のない我侭娘と相談に来た母親に語り出すと…。笑いと涙の人情小説集。
著者等紹介
宇江佐真理[ウエザマリ]
1949年函館生まれ。95年、「幻の声」で第七十五回オール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に『深川恋物語』で第二十一回吉川英治文学新人賞、翌01年には『余寒の雪』で第七回中山義秀文学賞を受賞。江戸の市井人情を細やかに描いて人気を博す。15年11月逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐々陽太朗(K.Tsubota)
58
宇江佐真理さんのご本はほぼすべて読んだつもりだったが、これは読み落としていた。どうやら講談社文庫、文春文庫、集英社文庫など、他社のものは読んだが、祥伝社文庫として出版されたものがごっそり抜け落ちていたようである。本書には六つの短編が収められている。それぞれ宇江佐さんお得意のホロリとさせられる人情話である。私の好みは「ほら吹き茂平」「せっかち丹治」「律儀な男」の三編。なかでも「せっかち丹治」が秀逸。生真面目で無骨な父が言葉や態度には表せないがひたすら娘の幸せを願っている様子がとてもイイ。2023/03/10
Y.yamabuki
18
表題作の一話目、これはもう傑作。思わず声に出して笑いたくなる。ニ話目は、仔細が分かるとしんみりした話。けれど静かな佇まいの庵の中で、庵主と娘のテンポの良い会話が弾む。趣を異ににした三話目は、幕末の歴史を「金棒引き」(噂好き)のおこうを通して垣間見た気分 。最終話は、これもまた趣向をがらりと変えたサスペンス風。タイトルの「律儀な男」がぴったり。様々詰まった六編、季節の移ろいを感じながら、当時の庶民の暮らしを垣間見るような楽しい読書だった。2023/08/10
えりまき
16
2023(132)短編集。ほら吹き茂平/千寿庵つれづれ/金棒引き/せっかち丹治/嬬恋村から/律儀な男。千寿庵と嬬恋村からの尼僧・浮風のお話がなんとも切ない。 2023/05/13
なんてひだ
2
祥伝社はこれで揃ったのかな、宇江佐真理さんの思い入れは非常に高くて、髪結は制覇してて、とにかく沁みる。茂平の法螺話一切かと思っていたのに短編集ですね。そのぶん千住庵の件が良かった おみねにお里にもうこの世にいなかったんだね、それも自分でもわかっている 2023/11/01
やむやむ
2
宇江佐真理作品は、何度も読み返してしまうし、その度に、大方の物語を忘れている自分の頭の悪さに、その時ばかりは感謝する。 だから表題の「ほら吹き茂平」を読み終えて読み切りとわかった時は「えー、もっと茂平さんのほらが見たいのに~!これから茂平さんとお春さんの伊勢参り珍道中が始まるのに~」と身悶えしたのも多分1回目では無いんだろうな(苦笑)。 宇江佐先生もシリーズにするつもりだったのではないかな?とサブタイトルの「無くて七癖あって四十八癖」を見ながら勝手にファンは邪推する。あ、サブタイトルが既にほらなのか!2023/07/09