出版社内容情報
小池真理子[]
著・文・その他
内容説明
一瞬、時間が止まった。万引き常習犯の優美は、その日はやめるつもりでいたが、突如、チャンスが巡り、一二〇万円のダイヤの指輪を盗んでしまう。極度の緊張と興奮に包まれ、愉悦に浸る優美だったが、その一か月後、得体のしれない恐怖に支配されることに…(「追いつめられて」)。小さな日常のズレが、思わぬ落とし穴を作っていく。傑作心理サスペンス全六編。
著者等紹介
小池真理子[コイケマリコ]
1952年、東京生まれ。成蹊大学文学部卒業後、出版社勤務を経て作家に。89年「妻の女友達」で日本推理作家協会賞(短編部門)、96年『恋』で直木賞、2006年『虹の彼方』で柴田錬三郎賞、13年『沈黙のひと』で吉川英治文学賞、21年に第二十五回日本ミステリー文学大賞など、数々の文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ざるこ
39
6篇。30年前の作品の新装版。あとがきによるとご本人は内容をまったく覚えてなかったそう。何よりそこに一番驚く。相変わらず火サスの趣だけど全編ラストは後味の悪いものに。不倫の末衝動的に殺してしまった時や計画殺人に穴が生じた時の狼狽は呆れるほど滑稽。こんなはずじゃなかったと後悔しても後の祭り。ドロドロした悪意と状況に応じて変わる女の心理を描くのが上手い。「不倫の恋に舞い上がりながらも心の奥底は冷めており、いずれ自分が元に戻ることを予感している」共感して自身のあざとさに気付いたりする小池作品はほんと恐ろしい。2023/02/01
ぐうぐう
37
1989年に刊行された短編集の文庫新装版。当時、小池真理子にとって4冊目の短編集だったようだ。その背景を知ると、なるほど確かに勢いがあるし、読者を驚かせてやろうとする企みに対する意気込みを強く感じる。とはいえ、どんでん返しに目を奪われてばかりでは、この短編集の良さは理解できないだろう。どんでん返しには必ず皮肉が込められ、ミステリのきっかけはどれも日常の中に不意に現れる落とし穴だったりする。そこには、小池のミステリに対峙する矜持が窺える。(つづく)2022/10/17
貴
28
「恐怖はどこにでも生まれ得る。でも追いつめられかったら、ちょっとした時間のずれが。運命のいたずらが、人を突然、落とし穴につきおとす。」小池真理子さんの、あとがきに書かれいていますが、幸せもどこにでも生まれ得るのでは !。ちょっとした時間のずれが。運命のいたずらがかもしれません。2025/04/14
reading
24
あとがきに代えてにある、恐怖はどこにでも生まれ得る。ちょっとした時間のずれ、運命のいたずらが、人を突然落とし穴に突き落とす。後には何も残らない。おしまい。ジ・エンド。救いもなく希望もない。かろうじて残されるのは皮肉だけ。こうしたものを淡々と描き、刺激を与えてくれる短編の名著。それにしても人は本当に多様であり、突拍子もない事態を引き起こす。摩訶不思議さを改めて感じる。2024/06/26
carl
23
嫌ミス短編集 面白かった 帯にあるように「こんなはずではなかったのに」だらけ 各短編とも長編のあらすじだったら良いのになぁと思った。 長編での復活を期待してしまった。 2022/12/08