内容説明
羽根藩江戸屋敷に暮らす少年赤座颯太は、両親が他界して帰国、伯父水上岳堂の親友で薬草園番人の、檀野庄三郎に託される。国許では、藩の家督を巡り、世子鍋千代を推す中老戸田順右衛門と、御一門衆の三浦左近を推す一派が対立。やがて藩主吉通となった鍋千代が国入りし、颯太は陰謀渦巻く城に出仕するが…。『蜩ノ記』の十六年後を描く羽根藩シリーズ第五弾!
著者等紹介
葉室麟[ハムロリン]
1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒。地方紙記者などを経て、2005年、「乾山晩愁」で歴史文学賞を受賞し、文壇へ。07年、『銀漢の賦』で松本清張賞を、12年、『蜩ノ記』(祥伝社文庫)で直木賞を、16年、『鬼神の如く 黒田叛臣伝』で司馬遼太郎賞を受賞。17年12月逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
119
豊後羽根藩シリーズの最終巻で「蜩の記」の続きで十数年が経っています。切腹した、戸田秋谷の忘れ形見の息子が藩の中老となりまたその姉が秋谷をみとった人物の妻となっています。そこに江戸に暮らす少年が豊後に戻りそこからの生活が描かれていきます。一種の成長小説のようですがそこで藩内部の陰謀に巻き込まれていきます。楽しめ真っした。2024/10/19
優希
46
面白かったです。草笛が聴こえると思うほど爽やかな物語でした。ハラハラドキドキする要素はないものの、優しい空気が全編を貫いていると思います。2022/06/08
tamami
46
いつもは行くことの少ない書店で、偶々手にした一冊。一篇の映画を見ているように、するすると読んでしまう。終盤はページをめくるのがもどかしいくらいだった。葉室さんの作品は『蜩ノ記』以来。流れるような文章の中に、的確な情景描写と人物の造形があり、動きある場面の中から主人公達の声が聞こえてくるようだった。作中人物の倫理観は、現代とは随分異なる点もあるかも知れないが、その時代の中で懸命に生きようとしている姿に心が動かされる。葉室作品はあまりの面白さ故に遠ざけてきたところもあったが、のめり込みそうな予感がしている。2020/12/26
のびすけ
37
「蜩ノ記」から16年後。蜩ノ記に登場した面々の成長した姿に、感動に心震えた記憶が鮮やかに蘇る。若き藩主・吉通と三浦左近との権勢争いの中で、吉通の幼馴染みで小姓として仕える颯太が、武士として男として成長する物語。かつて無実の罪を背負い死んだ戸田秋谷の忠義の志が、庄三郎、順右衛門、薫、お春、美雪らの心に生き続ける。「まことの勇気とは相手を斬ることではない。おのれが大切と思うひとのために命を投げ出して動じない心だ。」庄三郎が颯太へ掛ける言葉が心に響く。若き藩主と羽根藩の明るい未来を暗示する終わり方が清々しい。2021/07/19
よむヨム@book
27
★★★☆☆ 星3つ 「蜩ノ記」の十六年後を描いているのだが、読んだ感じは、痛快娯楽エンターテイメント風なので、「蜩ノ記」の感じを期待している方は肩透かしを食らうかもしれません。 しかし、私は、結構楽しめました。 また、赤座颯太が、その後どうなったのが気がかりです。2022/06/26