内容説明
一揆から三年、豊後羽根藩の欅屋敷で孤児を見守る女・楓の許に、謎の男・草薙小平太が訪れる。彼には楓の元夫で、大功を挙げた後、藩主の旧悪を難じ上意討ちに遭った前家老・多聞隼人と因縁があった。やがて羽根藩の改易を目論む幕府の巡見使来羽の時が迫る中、藩が隠蔽した旧悪を知る楓たちには魔の手が…。人を想う心を謳い上げる、感涙の羽根藩シリーズ第四弾!
著者等紹介
葉室麟[ハムロリン]
1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒。地方紙記者などを経て、2005年、『乾山晩愁』で歴史文学賞を受賞し、文壇へ。07年、『銀漢の賦』で松本清張賞を、12年、本作と同じ羽根藩が舞台の『蜩ノ記』(祥伝社文庫)で直木賞を、16年、『鬼神の如く 黒田叛臣伝』で司馬遼太郎賞を受賞。17年12月逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
52
生きる人、死ぬ人、見守る人、見守られる人。それぞれに生き方が胸を打ちます。人を想う心が刺さりました。『春雷』の続編らしいので、そちらも読みたいと思います。2021/12/03
のびすけ
37
羽根藩シリーズ「春雷」の続編。多聞隼人が上意討ちされた一揆騒動から三年後、欅屋敷で暮らす楓とおりう達。前藩主の兼清は、彼の悪行を知る楓たちの抹殺を企てる。命を懸けて楓たちを守ろうとする小平太と臥雲の生き様が深く胸を打つ。吊り橋での追っ手との攻防は心震わす名場面だ。守るべきもののために生きる、武士としての、男としての矜持。羽根藩シリーズを通して葉室麟さんが問い掛けるテーマだ。ラストで霞の中から思いがけず楓が姿を表したシーンに涙が止まらなかった。感涙の傑作!2021/05/20
てつのすけ
22
初めて読んだ葉室さんの作品は、「蜩の記」であった。それ以降、葉室さんの作品を多く読んだが、一貫しているのは、潔い生きざまが描かれていることだと思う。 現代に生きる我々には、到底、真似のできない生き方だ。このような生き方を、少しでも実践できるよう日々精進したい。2019/06/01
タツ フカガワ
22
前作『春雷』から3年後、木刀を腰に帯びた男が欅屋敷を訪れる。この男、多聞隼人に殺された白木立齋の実子だった。3年前、名君の仮面を多聞には剥ぎ取られた前藩主兼清だが、本作での悪人ぶりが凄まじく、欅屋敷に暮らす身寄りのない子どもや多聞ゆかりの人たちへの攻撃が容赦ない。一方多聞の遺志を受け継いだような楓たちの慈悲と救済、自己犠牲には今回も涙々でした。2019/05/10
のぶ1958
21
葉室さんの「春雷」の後編。「春雷」の登場人物が解っていると、斜め読みでもあっと言う間に読めてしまいます。 難しい境遇で育った草薙小平太が、楓やおりうあるいは一緒に暮らす人達の優しさに触れて、自身が優しく大きく強くなっていく。完璧な勧善懲悪のお話で、気分良く読み進められる。楓が迎えに来るラストシーンが暖かい。 「いとおしんでくれるひとがいるということが、この世で最も幸せなことなのではないだろうか。」2021/07/05