内容説明
両親の死後、女手ひとつで妹弟を育てた二十五歳のお吉は、とびきりの甘味好き。働いていた菓子処が暖簾を下ろすと、ひょんなことから、読売書き見習いに。人気者のお気に入りの菓子を紹介するため、歌舞伎役者の市川團十郎と尾上菊五郎に初取材すると、團十郎の亡き父との思い出の一品を捜すことに―。健気なお吉とほっこり甘い菓子が、心をときほぐす人情帖開幕。
著者等紹介
五十嵐佳子[イガラシケイコ]
1956年、山形県生まれ。「婦人公論」や「クロワッサン」などの女性誌を中心にファッション、インテリア、健康、法律など幅広い分野で執筆を行なう。その後、小説にも活躍の場を広げる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぶち
87
読友さんのレビューを拝読して読みたくなった時代小説です。ひょんなことから読売書き見習いになったお吉。このお吉、とびきりの甘味好きです。歌舞伎役者の團十郎と菊五郎、絵師の国芳、戯作者の馬琴、人気相撲力士や深川芸者などの有名人に好きなお菓子についてインタビューし、記事にまとめていくというアイデアを実践していくのですが、その姿がなんとも初々しくて、読んでいて少し心配になったりします。登場してくるお菓子の描写のなんとも美味しそうなこと!お吉の成長過程と周りの人間の人情と相まって、読んでいて楽しい小説です。2023/10/16
ぶんこ
52
「とぉんとくる」という言葉の響きが好きです。美味しい甘い物を味わい尽くす吉。食べている時の顔が「幸せな心持ちになる顔」と真二郎が言う。思わず(いいなぁ)と感無量のため息が出ました。側にいる人を幸せな心持ちにしてくれるなんて最高。仏頂面にならないように心しなくては。解説に紹介されていたスイーツ時代小説で、読んでいない本を早速お気に入りにいれました。羽二重餅も食べたくなりました。苦手なことから逃げずにおこうと頑張る吉がいじらしい。もっと続きを読みたい。2018/05/01
kagetrasama-aoi(葵・橘)
37
「読売屋お吉 甘味とぉんと帖」第一巻。両親(父親は菓子職人)の死後妹と弟を女手一つで育て上げたお吉(25歳)が主人公。お菓子を食べるのが何より好きで、味を記録していた帳面を偶々読まれたことが切っ掛けで、甘味専門の読売書きになることに。当時の有名人に取材になることに行くんですが、中でも滝沢馬琴の人物描写が楽しかったです。まだまだ見習いなので、落ち込むこともありますが、お吉の食べる姿があまりに美味しそうで、癒されます。一つ残念なのは、表紙絵のお吉があまりに本文の印象と異なることです。何故このような絵に?2023/11/18
ジュール リブレ
31
江戸時代のスイーツ専門の記者誕生! 歌舞伎役者、相撲取り、小説家、浮世絵画家、好みのお菓子を聞き出して、売り切れごめんの大人気。今にまで続く銘菓の数々、ほんとにおいしそうだこと。2019/06/20
メルル
27
菓子処を営んでいた両親を亡くしてから、別の菓子処で女中をしていたお吉。その店が暖簾を下ろすことになり、菓子とその菓子について書くことが好きだったことから菓子についての読売を書かないかと誘われる。そして見習いとして働くことに。「とぉんとくる」とは心の中に恋心が音を立てて落ちてくる様子を表す江戸言葉。うん、何処となくいなせな言葉。取材で様々な人々と交流し、新しい菓子の魅力を発見。最初はおどおどしていたお吉がどんどん生き生きし、自信を持って仕事に励む姿が素敵だった。お吉の美味しそうに菓子を食べる顔を見てみたい。2017/10/31
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