出版社内容情報
唯野 未歩子[タダノミアコ]
内容説明
葉太は九歳の小学生。ある日家に帰ると、母がいなくなっていた。代わりに滅多に家にいない録音技師の父が一緒に夏休みを過ごすという。最初は父を拒絶していた葉太。だが、土鍋で炊いたごはん、まっすぐ進む遊び、「雪の音」をつくる手伝いなど、経験したことのない日々に葉太は夢中になっていく。このまま一緒にいたいと思っていたけれど…。父と息子のひと夏の物語。
著者等紹介
唯野未歩子[タダノミアコ]
1973年東京都生まれ。武蔵野美術短期大学でグラフィック・デザインを学び、多摩美術大学で映画制作を学ぶ。在学中に映画『フレンチドレッシング』で女優デビュー。2005年に映画『三年身篭る』で監督・脚本を担当し、同名の小説で作家としてデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
hnzwd
38
母親が出ていってしまった家で、家庭の事を省みなかった父親と反発する息子が夏休みを過ごす。と、いうシチュエーションだけだと、類似作品があるのですが、大人びてしまった子供の葛藤とか、だめ親父っぷりとか、少しずつ打ち解けていく様子が、繊細な心の表現で描かれていて、完成度の高さを感じました。本当の気持ちをどこにも書かず、こちらに感じ取らせる、という描き方は良かったです。意外と重めですが。2016/07/29
coco夏ko10角
18
小学四年生の葉太、心の病になった母親は実家に、滅多に家にいなかった録音技師の父親と過ごす夏休み…。葉太が感じたこと、成長した部分、親友ダイスケとのこと。いい作品だった。2018/07/21
ひゃく
4
7/19~ 夏休みとともに、心の病にかかった母と離れて暮らすことになる少年。 代わりに、仕事でほとんど家にいなかった父との生活が始まる。 厳しい母とは反対で大らかな父との夏休みに戸惑う少年の心が開かれていく様が上手く描かれています。 10歳前後の子供の大人な部分はとても可愛らしく、いじましくもありますが、それでいて昔の自分にも当てはまり共感することができる。 ここ数日話題の「POKEMON GO」で遊ぶのもいいけれど、真っ直ぐだけ進むゲームや、大人の仕事を手伝ったり(見学)する方が人生の糧になる気がする。2016/07/21
花鳥風月
4
今夏読んで本当に良かった。 電車の中で危うく泣きそうになりました。唯野さんの考え方、とっても素敵だと思います。すとんっと、腑に落ちてしまったのです。 読んでるこっちもワクワクするような冒険は、無駄な時間ではなかった。勉強することや、考えなければいけないことはたくさんあったはずです。だからこそ、子供に戻るあの夏休みはとても貴重だったのだと。 10歳。2分の1成人式の歳です。強がって完璧な大人になりきってた僕は、実は半分にも満たない子供なのです。それを表していると感じた、あの締めの一文は最高でした。2016/07/22
yamakujira
2
小4男子の夏休み、実家に去った鬱病の母親に代わって、ほとんど家にいなかった父親が帰ってきた。嫌いだった父親の破天荒な一面に触れて徐々に心を開いた葉太は、子供らしさを取り戻しながらも、没交渉だった父親と親しむことで母親の呪縛からようやく逃れる。父親と母親のシビアな夫婦関係がどうしても暗い影を落とすし、葉太の成長よりも家庭環境の方が気になるけれど、まぁハッピーエンドなのかな。あとがきで「ほんとうは子どもなのに、心だけ大人にならざるをえないことは、とてもかなしい」と述べる作者には共感できない。 (★★★☆☆)2020/06/23




