出版社内容情報
中山 七里[ナカヤマシチリ]
内容説明
浦和医大・法医学教室に「試用期間」として入った研修医の栂野真琴。彼女を出迎えたのは偏屈者の法医学の権威、光崎藤次郎教授と死体好きの外国人准教授・キャシーだった。凍死や事故死など、一見、事件性のない遺体を強引に解剖する光崎。「既往症のある遺体が出たら教えろ」と実は刑事に指示していたがその真意とは?死者の声なき声を聞く、迫真の法医学ミステリー!
著者等紹介
中山七里[ナカヤマシチリ]
1961年岐阜県生まれ。2009年『さよならドビュッシー』で第八回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
zero1
420
死体は嘘をつかない。研修医の真琴は法医学教室には【死体が好き】と公言するキャシーに変人、光崎教授がいた。凍死、交通事故、ボートでの事故死、肺炎での病死と判断されたケースを解剖で死因解明。新たな事実が明らかに。【解剖しない監察医】も!「カエル男」に出てきた直情型の刑事、古手川に教授が出していた指令の意味は?最後にすべてのケースが繋がる。解剖は犯罪の摘発や基礎医学に役立つ。医学ミステリーというだけでなく【くだらない権威】など組織と責任も強く訴えている。読んでいて元監察医、上野正彦氏を思い出す。「憂鬱」に続く。2019/12/03
青乃108号
386
法医学教室に送り込まれた内科研修医・真琴。読者は彼女の視点で解剖の何たるかを知って行く事になる。初めて解剖に立ち会う真琴の受ける衝撃を表現する為、解剖シーンは腐臭漂う凄惨な描かれ様である。グロ耐性の無い読者にはキツイかも知れない。しかしながら五篇からなる連作短編の形を取っている本作は、基本、一話完結の形を取りながら各話にわざと【解決されていない不審な点】を残し、最終五話目で全て解決して見せその意外な事実に読者を驚かす構成が巧みであり、又登場人物が魅力的に描かれ、真琴の成長も嬉しい、そんな作品となっている。2022/12/07
射手座の天使あきちゃん
332
「生きてる人間は嘘をつくが死体は真実しか語らない」が信条の光崎教授、「死体好き」のキャシー准教授 そんな二人のいる法医学教室に送り込まれた新人研修医・真琴 短編すべてを通して、腐臭が漂ってきそうな解剖描写と死体が語る真実の無理矢理感に思わず失笑と眩暈(めまい)に襲われること必至です(笑)2017/06/23
Yunemo
310
法医学教室という設定、それぞれ個性的な3人の医師と1人の警官、この関係、現実離れしながらも、妙に具体的で。死体解剖描写にちょっと引きながらも、それでも好奇心に引きずられて。遺体が示す真実を見逃すな、確かに死体は嘘をつきません。Aiと聞くと海堂作品が思い浮かびます。保険適用外なんですか。要は、表層部分だけで判断することは、法医学者の立場として正しいものではない、感情面から否定するのは医学を志す者の態度ではない。死者の声なき声を聞く、ほんとに真理の追究だけを目指すこと、これって医学ばかりでなくすべての分野で。2016/07/26
SJW
293
浦和医大の法医学教室に行かされた研修医の栂野真琴は、法医学の権威、光崎教授のもと外国人准教授のキャシーと共に事件性のない遺体を解剖して真実を明らかにしていく5話からなる連作短編。お馴染みの古手川刑事と一緒に事件を解決する展開は小気味良く、中山さんの小説にはついつい引き込まれてしまう。解剖などの細かい描写はとても臨場感溢れており、パトリシア・コーンウェルの「検視官」を思い出す。今回、キャシー准教授は日本語を使えるアメリカ人だが、その言葉の微妙な使い方がとても笑える。リアルで綿密な描写は十分な取材(続く) 2018/08/31