内容説明
俊英と謳われた豊後羽根藩の伊吹櫂蔵は、役目をしくじりお役御免、いまや“襤褸蔵”と呼ばれる無頼暮らし。ある日、家督を譲った弟が切腹。遺書から借銀を巡る藩の裏切りが原因と知る。弟を救えなかった櫂蔵は、死の際まで己を苛む。直後、なぜか藩から出仕を促された櫂蔵は、弟の無念を晴らすべく城に上がるが…。“再起”を描く、『蜩ノ記』に続く羽根藩シリーズ第二弾!
著者等紹介
葉室麟[ハムロリン]
1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒。地方紙記者などを経て、2005年、『乾山晩秋』で歴史文学賞を受賞し、文壇へ。07年、『銀漢の賦』で松本清張賞を受賞。12年には豊後羽根藩を舞台にした『蜩ノ記』(祥伝社文庫)で第一四六回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
144
かつては俊英と謳われたものの、些細な失態でお役御免となった伊吹櫂蔵。落ちぶれて今では「襤褸蔵」とまで揶揄されるまでなった男。そんな櫂蔵が藩に裏切られ切腹となった義弟の無念を晴らすべく立ち上がる。落ちた花は二度とは咲かぬもの、再び花を咲かすことができるのか。「蜩の記」に続く羽根藩シリーズ。このシリーズを通して言えるテーマは「武士の矜持」であろう。命を絶つよりも耐えて忍んで生きながらえることの方がはるかにつらいものである。★★★★2017/12/31
とし
114
・・・「ひとはおのれの思いにのみ生きるのではなく、ひとの思いをもいきるのだ」 「落ちた花はおのれをいとおしんでくれたひとの胸の中にさくのだと・・・」・・・最後は感動的でしたね。2017/12/31
ツン
107
蜩ノ記から読んで感動して、乾山晩秋というデビュー作を含む短編集を読んだ時は、淡々とした抑制の効いた文章で驚きました。その短編集でも、後半に向かって、少しポップな感じ?になって行くのですが、作風にそういう濃淡があるような気がします。そういう意味では、本作はかなりポップよりな、時代小説ではあっても2010年代に書かれただけあるなという感じ。えっ、そんなことになってしまうの?と悲しくて泣けましたし、いい話だったけど、最後にまさかそんな水戸黄門の印籠みたいなまとめになるとは思いませんでした。2022/06/07
じいじ
97
読み始めて間もなく「これは面白そうだぞ」と手応えを感じた。物語の舞台は、著者の直木賞受賞作『蜩ノ記』と同じ九州・豊後の羽根藩。主人公・伊吹櫂蔵は、かつては抜きんでた技に長けた剣豪だったが、失脚して藩を追われた。その櫂蔵が義弟の背負った汚名を払拭するために、再び国許へ…。気骨ある物語の中で、櫂蔵とお芳との恋は、読み手の気持を癒してくれる一服の清涼剤です。二人の不器用な愛欲場面に、純粋な愛を見ました。朝井まかての解説は、なかなか味わい深いです。2022/09/30
takaC
81
『蜩ノ記』の15分の1程度なのね。まあ確かにあっちの方が読み応えがあったと思うけど、これはこれで悪くない。とっとと『春雷』も読みます。2017/11/18