内容説明
「離縁、離縁って簡単に言うない。世間様はそうそう離縁なんてするものか」「おあいにく。あたしは一度離縁された女で、うちの人は三度も離縁しているのさ。離縁の玄人だよ」(「夫婦茶碗」)。夫婦喧嘩の仲裁に、日々、大忙し。日本橋堀留町の会所の管理人、又兵衛とおいせは近所の家族の幸せを願い…。懸命に生きる男と女の縁を描く、心に沁み入る珠玉の人情時代小説。
著者等紹介
宇江佐真理[ウエザマリ]
1949年函館生まれ。95年、「幻の声」で第七十五回オール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に『深川恋物語』で第二十一回吉川英治文学新人賞、翌01年には『余寒の雪』で第七回中山義秀文学賞を受賞。15年11月逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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時代小説大好き本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふじさん
92
日本橋堀留町の会所の管理人又兵衛とおいせは、夫婦喧嘩の仲裁等近所の家族の幸せを願い忙しい日々を送っている。市井に懸命に生きる男と女の生き様を優しい目線で描いた作品は、いつもながら心に染み入る。今回は、幸せとは、夫婦の有り様は、家族とは、が様々な形で描かれる。作家の火坂雅志をして「そのへんのオバチヤン」と言わしめた宇江佐真理の作品、たまには読まずにいられない癒しがある。現代の様々な事が、形を変えて江戸の時代の描き出される。 2021/10/27
shizuka
55
頼み込まれて大家になって、という下りは『深川にゃん〜』と同じだけれど、こちらはその大家になった夫婦の物語。夫は×3、妻は×1。この罰印の威力が若い夫婦の離婚を抑える力になる話には深く頷く。離婚はしようとおもったらできてしまうのよ。だから高をくくってはだめ。妬みや貧乏や詮無いことで、心が荒んでしまった長屋住人や知人たち。彼らに常に気を配り、話を聞き、できるだけ寄り添うこの夫婦。とてもやさしい。江戸の大家の役割がよく分かった。最後の又兵衛の決心にはじんと来た。高砂〜しみじみいい歌だ。門出はいつでもやってくる。2017/01/14
tengen
30
又兵衛とおいせはそれぞれ3度の離婚と1度の離婚経験者。そんな二人が隠居後に新天地堀留町の会所を管理する。又兵衛に仕事を世話したのは差配をしている幼馴染の孫右衛門。離婚の玄人二人と差配夫婦が下町所帯の危機に手を差し伸べる。☆又兵衛とおいせの馴れ初め、そして畳職人の夫婦喧嘩 ☆武家に嫁いだおつるの苦労の訳☆元に戻れない寄場帰り浜次の意固地☆女丈夫の口入屋おみさと気弱な入り婿新三郎の夫婦危機☆おえんとおこう、嫁いでからの仲たがい☆又兵衛が風邪で寝込んで思う事☆彡夫婦茶碗/ぼたん雪/どんつく/女丈夫/灸花/高砂2021/01/06
to boy
26
気分が塞いでいるときは宇江佐さんの本を読むといい。気持ちが和らいで少しだけ生き返ることができます。この本も又兵衛とおいせ夫婦の睦まじい生活が描かれていて心がホッとしました。2017/05/31
タツ フカガワ
20
「ほら吹き茂平」の続編と思ったら、本書は日本橋堀留町の会所(町内の世話役)を任せられた初老夫婦、又兵衛とおいせが関わる6編連作の人情小説でした。この夫婦、又兵衛はバツ3で、妻のおいせはバツ1の内縁関係。全編を通して、この特殊な関係がわさびのように後々効いてくる。なかで「どんつく」は著者真骨頂の人情話。巻末の宮本昌孝氏の解説にもほろっとしました。2016/12/23
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