内容説明
中年作家の竜二は三年前に帰郷。過去の作品の印税で、ネコと一緒にのん気なその日暮らし。静かな毎日だが、竜二の目には数々の人間ドラマが映る。コンビニで出会った女の、笑顔の裏にある秘密。休業中の店への客からのアツい落書き。時に切なく、時に思いやりに溢れた一つひとつの出来事に、想いを巡らす。だが転機は訪れ…(「A DAY」より)ほんのりと人の心を浮き彫りにする作品集。
著者等紹介
辻内智貴[ツジウチトモキ]
1956年、福岡県生まれ。シンガーとして活動後、2000年に「多輝子ちゃん」で第一六回太宰治賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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はつばあば
62
「信さん」を読んで以来・・50年前の京都と福岡の田舎との時差はあるだろうが、懐かしい風景と辻内さんの情感溢れた詩的な言葉の数々に惚れた。そして今一番新しい辻内さんに逢いたくて4冊購入のうちのこれを先ず手に。生と死を幼い頃に味わった人がもつ独特な優しさ。56歳、まだまだ枯れるには早いですが、とても素敵な死生観をお持ちです。寂聴さんのように脂ぎることもなく、愛子さんのように毒舌を吐かず・・しっとりとした、いい男に出会えたなぁって思える作家さんです。勿論うちの爺様よりは少し劣りますが・・。次は彼のどの本を取ろう2017/04/02
hiromi go!
32
この人の作品は大好きで、ひと昔前、相当読み込んだ。ピーンと張り詰めた、ギリギリの緊張感、正義感が大好きだった。久しぶりに出した作品。ギリギリの緊張感を維持出来ずに堕落した自分を自虐しながら、それを非合理的に正当化しようとする姿が、何だかとても哀しかった。と思いながら読み進めたら、それだけでは終わらなかった。様な、そのまま終わった様な。今一つよくわからなかった。笑2015/05/30
*mayu*
18
エッセイなのか小説なのか…とりあえず本人がモデルなのであろう「A DAY」など4篇の作品が収録された本書。優しい文体で読んでいて気持ちが良く、世界観に浸れました。ぼちぼち小説を書きギリギリ食べていけるくらいの収入を得る作家、竜二が帰郷してからの出会い、別れ…文体は優しいのにドカンと痛い気持ちになるのは何故だろう(笑)同時収録された「記憶」もミステリータッチで面白く、結末にヒヤッとしました。1冊で様々な辻内さんに触れたような気がします。2015/07/06
ウィズ
15
後書きの「人間は人間の手本になる必要などない。一つの手本であればいいのだと思う」という一節が、今の自分の心にすっと入ってきました。優れた随筆兼短編集です。2015/10/17
MOKIZAN
11
「A DAY」創作小説なのか、私小説なのか、エッセイくずれなのか、実態はよく分からなかったけど、面白かった。 暮らしていくためには他人と絡まなくちゃいけないし、やり切れないことに付き合わされることもある、こっちが迷惑を掛けることも、掛けられることも、相手の思いがけない素を垣間見ることも。それらを少しでも穏やかに、気分良くやり過ごしてゆきたいな、とあらためて思った。2015/07/05